親との話し方

親とお金の話をいつするか。認知症になる前に家族で確認しておきたいこと

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わかっている度 ★★☆ 中研究3本・公的資料3件を整理
ノートとペン
Photo: Phil Slattery / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品・サービスの紹介はしていません。出典は末尾)。

親とお金の話をしたいと思っても、「お金目当てだと思われたら」と迷う人は少なくありません。研究からは、お金の管理の難しさは、認知症と診断されるより前から少しずつ表れることがあるとわかっています。だからこそ、親が自分で決められるうちに、親の希望を聞いておく話し合いが大切です。

3行でわかる

  1. 日本の65歳以上のうち、認知症は12.3%、軽度認知障害(MCI)は15.5%と推計されています(2022年、厚生労働省)。
  2. 米国の研究では、認知症と診断された人は、診断の6年前から支払いの遅れが少し多いという関連がありました。
  3. 話し合う目的は財産を知ることではなく、親の希望を守ること。金額より「誰に何を頼みたいか」を先に聞きます。

01結論から言うと

親とお金の話は、親が元気で自分で決められるうちにするのがよいです。残高ではなく、お金の置き場所と「困ったとき誰に何を頼みたいか」という親の希望を確かめます。

お金の管理には、計算や手順を覚える力が必要です。研究では、こうした複雑な力は、物忘れが目立つ前後の早い段階から弱まりやすいとされています。

一方で、お金や暮らしをどうしたいかという親自身の考えは、早い段階では十分に話せることが多いです。

任意後見制度のように、本人がひとりで決められるうちにしか結べない備えもあります。急ぐ必要はありませんが、「いつか」を少し前倒しにしておくと、親が選べることが増えます。

02研究とデータでわかっていること

日本の高齢者の約3割は、認知症か軽度認知障害と推計されています。研究では、お金の複雑な扱いは早い段階から難しくなり、簡単な扱いは保たれやすいことがわかっています。

443.2万人認知症の高齢者の推計(日本・65歳以上・2022年)。有病率12.3%
558.5万人軽度認知障害(MCI)の高齢者の推計(日本・65歳以上・2022年)。有病率15.5%
6年前認知症と診断された人で、支払いの遅れが多くなり始めた時期(米国・ひとり暮らしの高齢者・2021年の研究)
10本認知症の人のお金を扱う力を、客観的な検査で調べた研究のまとめ(2017年)

厚生労働省(九州大学 二宮利治教授の研究班の調査から作成、2024年公表)[1]

2022年の65歳以上の認知症の有病率は12.3%、軽度認知障害は15.5%で、合わせて約28%でした。2040年には認知症の高齢者が584.2万人になると推計されています。

対象: 日本の4地域で行った悉皆調査をもとにした全国推計 / 限界: 有病率が今後も一定と仮定した推計です。

Nicholasら(2021)[4]

認知症と診断された人は、似た条件の人と比べて、診断の6年前から支払いの遅れ(30日以上)が多いという関連がありました(7.7%対7.3%)。差は診断後に大きくなりました(7.9%対6.9%)。

対象: 米国の公的医療保険(メディケア)に加入する、ひとり暮らしの高齢者81,364人(1999〜2018年) / 限界: 差は小さく、支払いの遅れがあれば認知症というわけではありません。日本の研究ではありません。

Triebelら(2009)[5]

軽度認知障害から1年のうちにアルツハイマー型の認知症に進んだ人は、そうでない人や健康な人より、小切手帳の管理(残高の計算など)の力や、お金を扱う力の総合点が大きく下がっていました。下がっていたのは計算などの手順で、小切手帳や明細の仕組みの理解は保たれていました。

対象: 米国の健康な高齢者76人と軽度認知障害の87人 / 限界: 人数が少なく、1年間の追跡です。

SudoとLaks(2017)[6]

10本の研究を整理すると、軽いアルツハイマー病では、明細の管理やお金の判断など複雑な力が弱まる一方、簡単なお金の扱いは保たれていました。中等度になると、すべての領域で難しくなっていました。

対象: 認知症の人のお金を扱う力を客観的に調べた研究10本 / 限界: 研究の数が少なく、評価の方法もまだ検証の途中です。

03まだわかっていないこと

家族が早めにお金の話をすると、その後のトラブルが減るかを確かめた研究は、まだほとんどありません。日本の高齢者を対象にした研究も少ないのが現状です。

  • 家族で話し合っておくことが、親の暮らしや家族関係にどう影響するか
  • 日本の高齢者で、お金の管理の難しさがいつ頃から表れるか(今ある研究は米国が中心)
  • どんな話し方なら、親が負担を感じずに希望を伝えられるか

04親と一緒にできること

目的を伝える、金額より置き場所と希望を聞く、制度を一緒に知る。この3つを、親のペースで少しずつ進めるのが基本です。

1

「親の希望を守るため」と目的を伝える

財産を知りたいわけではないと、先に伝えます。「もしお母さんが入院したときに、お母さんの思うとおりにできるように、少しだけ聞いておいてもいい?」

目安 帰省のときや、親の知人の話題が出たときに

2

金額ではなく「置き場所」を一緒にメモする

取引のある金融機関、年金が振り込まれる口座、毎月の引き落とし、保険証や大事な書類の置き場所を、親が書くメモにまとめます。暗証番号やパスワードは聞きません。

目安 1回30分・年に1回見直す

3

「判断が難しくなったら誰に何を頼みたいか」を聞く

親が決めることを大事にします。「もしひとりで決めるのが不安になったら、誰に手伝ってほしい?きょうだいで分けた方がいい?」

目安 急がず、何回かに分けて

4

公的な制度を一緒に知っておく

成年後見制度には、判断が難しくなってから家庭裁判所が後見人等を選ぶ「法定後見」と、自分で決められるうちに頼む人と内容を契約で決めておく「任意後見」があります[2][3]。お住まいの地域の地域包括支援センターや権利擁護支援の相談窓口で相談できます。

目安 気になった時点で・電話1本から

物忘れが気になってきたら、親の物忘れは年のせい?も参考にしてください。体や物忘れの様子で気になることは、かかりつけ医に相談できます。介護が始まりそうなときの仕事との両立は介護離職を防ぐには?にまとめています。

05よくある質問

親とお金の話をするのは失礼じゃない?

お金の話を「財産を知りたい」という形で切り出すと、親が身構えるのは自然です。「もしものときに、お母さんの希望どおりにできるように聞いておきたい」と、目的が親の希望を守ることだと伝えると話しやすくなります。残高や金額まで聞く必要はありません。

認知症になる前に、親のお金で何を確認しておけばいい?

金融機関の名前、年金が振り込まれる口座、毎月の引き落とし(公共料金など)、大事な書類の置き場所、そして「判断が難しくなったら誰に何を頼みたいか」という親の希望です。暗証番号やパスワードを聞き出す必要はありません。

任意後見制度とは何?

厚生労働省によると、ひとりで決められるうちに、認知症などに備えて、本人が選んだ人に代わりにしてもらいたいことを契約で決めておく制度です。契約は公証人が作る公正証書で結び、家庭裁判所で任意後見監督人が選ばれて初めて効力が生じます。

親がもう認知症と診断されていたら、もう遅い?

遅くはありません。研究では、軽い段階の認知症では、簡単なお金の扱いは保たれていることが多いとされています。本人の希望をできるだけ聞きながら進めます。制度については、お住まいの地域の地域包括支援センターや、権利擁護支援の相談窓口に相談できます。

出典

  1. 厚生労働省 (2024). 認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計(令和5年度老人保健事業推進費等補助金「認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究」九州大学 二宮利治より作成). https://www.mhlw.go.jp/content/001279920.pdf
  2. 厚生労働省 成年後見はやわかり. 成年後見制度の種類. https://guardianship.mhlw.go.jp/personal/type/
  3. 厚生労働省 成年後見はやわかり. 任意後見制度とは(手続の流れ、費用). https://guardianship.mhlw.go.jp/personal/type/optional_guardianship/
  4. Nicholas, L. H., Langa, K. M., Bynum, J. P. W., & Hsu, J. W. (2021). Financial Presentation of Alzheimer Disease and Related Dementias. JAMA Internal Medicine, 181(2), 220-227. https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2020.6432
  5. Triebel, K. L., Martin, R., Griffith, H. R., Marceaux, J., Okonkwo, O. C., Harrell, L., Clark, D., Brockington, J., Bartolucci, A., & Marson, D. C. (2009). Declining financial capacity in mild cognitive impairment: A 1-year longitudinal study. Neurology, 73(12), 928-934. https://doi.org/10.1212/wnl.0b013e3181b87971
  6. Sudo, F. K., & Laks, J. (2017). Financial capacity in dementia: a systematic review. Aging & Mental Health, 21(7), 677-683. https://doi.org/10.1080/13607863.2016.1226761