親の薬が多すぎる?何種類から気をつけるか、高齢者の多剤服用でわかっていること

親の薬が多いこと自体は、すぐに悪いとは言えません。ただ、薬が増えるほど副作用やふらつきが起きやすいデータがあります。家族が勝手に減らすのではなく、飲んでいる薬を全部集めて、医師や薬剤師に見てもらうのが確かな第一歩です。
3行でわかる
- 75歳以上では、1つの薬局で1か月に7種類以上の薬が出ている例が23.1%ありました(2025年)。
- 薬の数が増えるほど副作用が増え、6種類以上で特に多いというデータがあります。日本の外来の研究では5種類以上で転倒との関連がありました。
- 薬を減らす取り組みで健康がどこまで良くなるかは、試験の結果がまだそろっていません。自己判断でやめないことが大切です。
01結論から言うと
何種類から危ないという決まった線はありません。気をつけたいのは「数」より「中身」と「全体を誰も見ていないこと」です。全部の薬をかかりつけ医か薬剤師に一度見てもらいます。
帰省して、親の薬の袋の多さに驚く人は少なくありません。内科、整形外科、眼科と通う先が増えるたびに、薬も足されていきます。
厚生労働省の指針では、薬が多いことで副作用や飲み間違いなどの問題につながる状態を「ポリファーマシー」と呼んでいます[1]。数が多いだけでは、ポリファーマシーとは言いません。治療に6種類以上の薬が必要な人もいれば、3種類で問題が起きる人もいる、と指針は書いています[1]。
問題になりやすいのは、病院ごとに2〜3種類ずつ出た薬が積み重なり、全体を誰も把握していない状態です。薬の副作用を、別の薬で抑え続ける悪循環(処方カスケード)が起きることもあります[1]。
02研究とデータでわかっていること
75歳以上の4割近くが、1つの薬局で月5種類以上の薬をもらっています。薬が6種類以上で副作用が増え、5種類以上で転倒が増えたという日本のデータがあります。
厚生労働省の統計で、75歳以上が薬局でもらった薬の種類(1つの薬局・1か月分)は次のとおりです[2]。
- 1〜2種類: 35.8%
- 3〜4種類: 25.1%
- 5〜6種類: 16.0%
- 7種類以上: 23.1%
2025年8月審査分の数字です。複数の薬局を使う人は、これより多くの薬を飲んでいることがあります。
厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」(2018)[1]
薬の副作用は、薬の数にほぼ比例して増え、6種類以上で特に増えたデータがあるとしています。高齢者では、副作用がふらつき・転倒、物忘れ、せん妄(急に混乱する状態)、食欲の低下、便秘、尿のトラブルなどとして表れ、見過ごされやすいと注意しています。
対象: 医師・歯科医師・薬剤師向けの指針(65歳以上、特に75歳以上) / 限界: 指針は患者や家族を利用対象としておらず、気になる点は医療関係者に相談するよう書いています。
Kojimaら(2012)[3]
外来に通う高齢者を2年間追うと、32人が転倒しました。年齢や持病の数などを考えに入れても、飲む薬の数が多いほど転倒と関連があり、5種類以上が目安になりました。
対象: 日本の老年科外来、平均76.9歳の172人 / 限界: 観察研究のため、薬が転倒の原因とまでは言えません。著者らも、薬を減らす試験で確かめる必要があるとしています。
Pageら(2016)[4]、Rankinら / Cochrane(2018)[5]
薬を減らす取り組みをまとめた研究では、くじ引きでない研究では死亡が減っていましたが、くじ引きの試験では全体で差がはっきりしませんでした。一人ひとりの薬を見直す取り組みに限ると、くじ引きの試験でも死亡が減っていました[4]。薬剤師などによる薬の見直しの研究32件のまとめでは、入院や生活の質が変わるかは「ほとんど差がないかもしれない」という結果でした[5]。
対象: 平均73.8歳・3万4143人の132論文[4]、65歳以上で4種類以上の薬を飲む人の32研究(高所得国)[5] / 限界: 研究の種類によって結果が分かれ[4]、Cochraneのまとめでは結果の確かさは「低い〜とても低い」と評価されています[5]。
03まだわかっていないこと
薬を減らすと親の健康がどこまで良くなるかは、まだはっきりしていません。どの薬をどの順で減らすのが良いかも、一人ひとりの病状で変わります。
- 薬の見直しで入院や生活の質が良くなるか(確かさの低い結果にとどまります)[5]
- 薬を減らすと死亡が減るか(くじ引きの試験全体では差がはっきりしません)[4]
- 薬の数が転倒の原因なのか、病気の多さを映しているだけなのか[3]
- 日本で、家族の関わりが薬の見直しに役立つかを確かめた試験(今回調べた範囲では見当たりませんでした)
04親と一緒にできること
家族の役目は、薬を減らすことではなく「全部の薬を見える形にして、医師・薬剤師につなぐこと」です。薬の判断は親と医療者に任せます。
飲んでいる薬を、全部一緒に並べてみる
指針は、通っている病院・診療科と、市販薬やサプリメントも含めた全部の薬を把握することを求めています[1]。「もしものとき私も知っておきたいから、薬を一緒に見せてもらっていい?」と、管理ではなく安心のためと伝えます。
目安 次の帰省で20分ほど
お薬手帳を1冊にまとめ、薬局もできれば1つに
指針は、お薬手帳の活用を含めて、処方と調剤を一か所で管理することを勧めています[1]。病院ごとに手帳が分かれていたら、1冊にまとめるよう薬局で相談できます。
目安 次に薬をもらうとき
「減らせるか」は受診のときに一緒に聞く
親に「薬を減らしなよ」とは言わず、「飲むのが大変そうだから、まとめられるものがあるか先生に聞いてみない?」と誘います。指針は、急にやめず少しずつ慎重に行うよう医師に求めています[1]。家族の判断でやめるのは避けます。
目安 次の定期受診で
05よくある質問
高齢者の薬は何種類からが多すぎる?
決まった線はありません。厚生労働省の指針では、6種類以上で副作用などが特に増えたデータを紹介しつつ、6種類以上が必要な人も、3種類で問題が起きる人もいるとしています。数より中身が大事なので、医師や薬剤師に全体を見てもらいます。
親の薬を家族の判断で減らしてもいい?
やめてください。厚生労働省の指針は、薬をやめるときは少しずつ慎重に行うよう医師に求めています。急にやめると病状が悪くなることがあるためです。減らしたいときは、かかりつけ医か薬剤師に相談します。
薬が多いと、ふらつきや物忘れが起きることはある?
あります。厚生労働省の指針は、ふらつき・転倒、物忘れ、食欲の低下、便秘などが薬の副作用として表れることがあり、見過ごされやすいと注意しています。気になる変化はメモして、受診のときに伝えます。
出典
- 厚生労働省. 高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)(2018年5月). https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/kourei-tekisei_web.pdf
- 厚生労働省. 令和7(2025)年社会医療診療行為別統計の概況「薬剤の使用状況」. https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/sinryo/tyosa25/dl/yakuzai.pdf
- Kojima T, et al. (2012). Polypharmacy as a risk for fall occurrence in geriatric outpatients. Geriatrics & Gerontology International, 12(3), 425-430. https://doi.org/10.1111/j.1447-0594.2011.00783.x
- Page AT, et al. (2016). The feasibility and effect of deprescribing in older adults on mortality and health: a systematic review and meta-analysis. British Journal of Clinical Pharmacology, 82(3), 583-623. https://doi.org/10.1111/bcp.12975
- Rankin A, et al. (2018). Interventions to improve the appropriate use of polypharmacy for older people. Cochrane Database of Systematic Reviews, CD008165. https://doi.org/10.1002/14651858.CD008165.pub4


