親の転倒を防ぐには?家の中で多い場所と、効果が確かめられた対策

親の転倒を防ぐいちばん確かな方法は、バランスと足腰をきたえる運動です。60歳以上を対象にした試験のまとめでは、運動で転ぶ回数が23%減りました。家の中の片づけや手すりも、一度転んだことがある親には効果がはっきりしています。
3行でわかる
- 東京で救急搬送された高齢者の「ころぶ」事故は、約6割が住まいで起きていました(2024年)。いちばん多い場所は居室・寝室です。
- バランスの運動を中心にした運動は、転ぶ回数を減らします(確かさの高い結果)。
- 家の危ない所を直す対策は、最近転んだ・入院したなど、転びやすい人で特に効果がありました。
01結論から言うと
親の転倒対策は「運動」と「住まいの見直し」の2本立てが基本です。運動は誰にでも効果があり、住まいの見直しは転んだことのある親で特に効きます。
転倒は、ただのケガで終わらないことがあります。日本で介護が必要になった主な原因のうち、「骨折・転倒」は14.6%で3番目に多い原因でした(2025年)[2]。
一方で、転倒は防げる部分が大きいこともわかっています。世界中のくじ引き試験(効果を公平に比べる実験)をまとめた研究で、運動にも住まいの見直しにも効果が確かめられました[3][4]。
ただし、親に「転ぶと危ないから」と言うと、年寄り扱いされたと感じて受け入れにくくなることがあります[5]。伝え方は04で紹介します。
02研究とデータでわかっていること
高齢者が転んで救急車で運ばれる場所は、住まいの中、特に居室・寝室が最多です。運動は転ぶ回数を2割以上減らし、住まいの見直しは転びやすい人で約4割減らしました。
東京消防庁の2024年のデータでは、「ころぶ」事故で運ばれた65歳以上73,500人のうち、42,180人が住宅などの住まいで転んでいました。その9割以上は屋内です[1]。住まいの中で多かった場所は次のとおりです。
- 1位 居室・寝室: 29,783人(住まいでの事故の約71%)
- 2位 玄関・勝手口など: 3,900人(約9%)
- 3位 廊下・縁側・通路: 2,653人(約6%)
- 4位 トイレ・洗面所: 1,229人(約3%)
- 5位 台所・ダイニングなど: 1,079人(約3%)
割合は、東京消防庁の人数をもとに当メディアで計算しました(東京都のうち稲城市・島しょ地区を除く地域、65歳以上、2024年)[1]。階段や玄関より、ふだん長くいる部屋のほうがずっと多いのが特徴です。また、転んで運ばれた高齢者の約4割が、入院が必要な「中等症」以上でした[1]。
Sherringtonら / Cochrane(2019)[3]
運動をした人は、しなかった人に比べて転ぶ回数が23%少なくなりました。1回以上転んだ人の数も15%減りました。バランスや立ち座りなど動作の練習が中心の運動では、転ぶ回数が24%減りました。
対象: 25か国、自宅で暮らす60歳以上(平均76歳)の108の試験 / 限界: ウォーキングだけ・筋トレだけ・ダンスの効果ははっきりしませんでした。
Clemsonら / Cochrane(2023)[4]
家の転びやすい所を点検して直す対策(段差に滑り止めを付ける、物を床に置かないなど)は、全体で転ぶ回数を26%減らしたと考えられます。最近転んだ・入院した・日常生活に手助けが必要といった転びやすい人では38%減りました。
対象: 10か国、自宅で暮らす60歳以上(平均78歳)の22の試験 / 限界: 転びやすさで選ばなかった人たちでは、減る効果は見られませんでした。
Yardleyら(2006)[5]
高齢者は「転倒予防」のアドバイスを、役に立つとは思っても「自分向けではない」「見下されている」と受け取りやすいことがわかりました。バランスがよくなる良い面を伝えるほうが受け入れられやすい、と著者らは考えています。
対象: 英国の研究チームによる61〜94歳の66人への聞き取り / 限界: 聞き取りの研究で、伝え方を変えて転倒が減るかは確かめていません。
03まだわかっていないこと
運動の種類ごとの差や、転んだことのない元気な親に住まいの見直しが効くかは、まだはっきりしていません。日本の家の作りに合わせた試験も多くありません。
- ウォーキングだけ、筋トレだけで転倒が減るか(研究の結果がそろっていません)[3]
- 転びやすさで選ばない人たちへの住まいの見直しの効果(効果は見られませんでした)[4]
- 運動で骨折や入院がどこまで減るか(確かさの低い結果にとどまります)[3]
- 畳や布団など、日本の住まいに絞った効果(2つのまとめからは読み取れません)
04親と一緒にできること
「転ばないように」ではなく「好きなことを長く続けるために」と伝えるのがコツです。まず一緒に体を動かし、次に居室・寝室と玄関を一緒に見直します。
「自分のため」を入り口に、運動に誘う
「最近、私も足腰が気になってきて。一緒にできる体操ないかな」と、自分ごととして誘います。片足立ちや椅子からの立ち座りなど、バランスの練習が中心の運動を選びます。
目安 帰省や電話のついでに5分から
居室・寝室と玄関を、一緒に歩いて見直す
床の物や通路をまたぐ電源コード、玄関の段差を見ます。「私が来たとき足を引っかけそうで」と、自分や孫を理由にすると角が立ちにくくなります。東京消防庁は、段差のある場所や玄関に手すりや滑り止めを付けること、電源コードが通路にかからないようにすることを勧めています[1]。
目安 次の帰省で15分ほど
座って着替える・つかまって立つ習慣を話題にする
東京消防庁は、着替えるときは腰をかけ、立ち上がるときは近くの物につかまることを勧めています[6]。「テレビでやってたんだけど」と、聞いた話として伝えると押しつけになりにくくなります。
目安 会話の中で1回
転んだことがあれば、相談先に一緒につなぐ
この1年で転んだ・入院したことがある親は、住まいの見直しの効果が大きい人です[4]。「去年転んだときのこと、一度かかりつけの先生に話してみない?」と声をかけ、住まいの相談はお住まいの地域の地域包括支援センターでもできます。
目安 次の受診の前に
05よくある質問
高齢の親が家の中で転びやすい場所はどこ?
東京消防庁の2024年のデータでは、居室・寝室が最も多く、次いで玄関・勝手口、廊下・通路でした。住まいで転んで運ばれた65歳以上の約7割が居室・寝室です。
ウォーキングをしていれば転倒は防げる?
ウォーキングだけで転倒が減るかは、研究でははっきりしていません。転ぶ回数を減らす効果が確かめられているのは、バランスや動作の練習が中心の運動です。
手すりや片づけを勧めると、親が年寄り扱いされたと嫌がらない?
嫌がられることはあります。英国の研究でも、高齢者は転倒予防の助言を「自分向けではない」と受け取りやすいとわかりました。「好きなことを続けるため」「自分も来たとき使いやすいように」と、親の暮らしを応援する言い方にします。
出典
- 東京消防庁. 救急搬送データからみる高齢者の事故(令和6年中のデータ、2026年3月更新). https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/nichijo/kkhansoudeta.html
- 厚生労働省. 2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況 IV 介護の状況. https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa25/dl/05.pdf
- Sherrington C, et al. (2019). Exercise for preventing falls in older people living in the community. Cochrane Database of Systematic Reviews, CD012424. https://doi.org/10.1002/14651858.CD012424.pub2
- Clemson L, et al. (2023). Environmental interventions for preventing falls in older people living in the community. Cochrane Database of Systematic Reviews, CD013258. https://doi.org/10.1002/14651858.CD013258.pub2
- Yardley L, et al. (2006). Older people's views of advice about falls prevention: a qualitative study. Health Education Research, 21(4), 508-517. https://doi.org/10.1093/her/cyh077
- 東京消防庁. リーフレット「ころんで救急搬送、実は、こんなに多い!」(令和5年中のデータ). https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/content/000093870.pdf


