75歳以上の免許更新の認知機能検査とは?親が受ける前に知っておきたいこと

親のもとに「認知機能検査のお知らせ」が届いた。どんな検査なのか、落ちたら免許はどうなるのか、子どもも気になるところです。警察庁の案内(2026年10月時点)をもとに、受ける前に知っておきたいことを整理しました。
3行でわかる
- 認知機能検査は、免許の更新期間が満了する日に75歳以上の人が受ける、記憶力と時間の感覚を確かめる検査です(2009年導入)。
- 総合点が36点未満だと「認知症のおそれがある」と判定されますが、医師の診断ではなく、すぐに免許が取り消されるわけでもありません。
- 2025年には全国で約281万人が受けました。警察庁は検査用紙を公開していて、家族が検査員役になって事前に体験できます。
01結論から言うと
認知機能検査は、75歳以上の人が免許を更新するときに受ける、記憶力と時間の感覚を確かめる簡単な検査です。病気の診断ではありません。「おそれあり」と出ても、医師の診断を受けるまで免許は取り消されません。
対象は、免許証の更新期間が満了する日に75歳以上の人です[1]。ふだん車をほとんど運転しなくても、更新するなら受ける必要があります[2]。
警察庁は、この検査を「医師の行う認知症の診断や医療検査に代わるものではない」と説明しています[1]。検査員向けの手引きには、受ける人の多くは認知機能の低下も見られない優良運転者だと心に留め、長年の安全運転に敬意を払うよう書かれています[3]。
02研究とデータでわかっていること
検査はイラストを覚えて答える「手がかり再生」と、今日の日付や時刻を答える「時間の見当識」の2つです。点数を式に当てはめ、36点未満なら「認知症のおそれがある」と判定されます。
警察庁「認知機能検査について」「採点方法」[1・4]
手がかり再生は、イラストを覚え、採点に関係しない課題をはさんでから、ヒントなしとヒントありで思い出します。時間の見当識は、検査時の年・月・日・曜日・時間を答えます。用紙に書く方法と、タブレットにタッチペンで入力する方法があります。結果は書面で知らされます。
対象: 更新期間が満了する日に75歳以上の人 / 補足: 信号無視など特定の違反をした75歳以上の人も、臨時の認知機能検査を受けます。2025年は177,970人でした[6]。
警察庁「認知機能検査に関するQ&A」[2]
「認知症のおそれがある」と判定された人は、専門医の診断(臨時適性検査)を受けるか、医師の診断書を出します。認知症と診断された場合は、聴聞などの手続きを経て、免許の取消しや停止になります。検査は手数料を払えば何度でも受け直せます。
補足: 「おそれがない」と判定された人は、高齢者講習(2時間)を受けて更新に進みます。75歳以上で一定の違反歴がある人は、運転技能検査(70点以上で合格)も受けます[5]。
Inadaら(2023)[7]
2017年3月の認知機能検査に関する制度改正の後、75歳以上の運転者の事故は男性で減りました。一方、歩行者や自転車として事故でけがをする高齢者は、一部の年齢層で増えていました。2017年3月〜2019年12月の推計で、事故は3,670件減り、歩行者・自転車のけがは959件増えたとされています。
対象: 日本の警察の事故データ(2012年7月〜2019年12月、70歳以上) / 限界: 集団全体の変化を見た研究で、検査が一人ひとりの事故を防ぐかは示していません。
高齢の運転者だけが特に事故を起こしているわけではない、という日本の分析もあります。過失のある事故の率は中年以降に年齢とともに上がりますが、若い運転者を超えてはいませんでした[8]。
03まだわかっていないこと
認知機能検査の点数が、一人ひとりの事故の起こしやすさをどこまで見分けられるかは、まだはっきりしていません。制度が事故を減らした一方で、歩行や自転車でのけがが増えた可能性も指摘されています。
- 検査の点数と、その人が将来事故を起こすかどうかの関係(検査は認知症のおそれを確かめるためのもので、事故を予測する道具ではありません)
- 運転をやめた人が、歩行や自転車で出かける際の安全をどう守るか
- 女性の運転者では、制度の改正後に事故が減ったという結果がはっきりしなかった理由
04親と一緒にできること
通知が届いたら日程を一緒に確かめる、公開されている検査用紙で下見をする、結果がどうでも一緒に考えると伝える。この3つが、親の不安を軽くする準備になります。
通知が届いたら、日程を一緒に確かめる
検査は満了日の6か月前から受けられます。受け方や予約の要否は、届いた通知の案内で確かめます。「お知らせが来たら教えてね。いつ行くか、一緒に見てみようか」
目安 通知が届いたら・15分
公開されている検査用紙で、一度下見をする
警察庁は検査用紙とイラストを公開していて、周りの人が検査員役になって体験することをすすめています[1]。試験の練習ではなく、当日の流れを知るための下見にします。「どんな検査か、一回見ておくと当日ラクかもよ」
目安 受ける前に・30分ほど
結果がどうでも、一緒に考えると伝える
「おそれあり」と出ても、すぐ免許がなくなるわけではありません。受け直すこともできます[2]。「結果がどうでも責めたりしないよ。そのときは一緒に考えようね」
目安 検査の前後に
これからの運転を話すきっかけにする
更新の時期は、夜の運転を控えるなど、運転の続け方を話すよい機会です。運転の不安は、運転免許試験場などの安全運転相談(#8080)でも相談できます[5]。
目安 更新の前後に
物忘れが気になる場合は、検査の結果を待たずに、かかりつけ医かお住まいの地域の地域包括支援センターに相談できます。物忘れと認知症のはじまりの違いも参考にしてください。返納を考える段階なら、免許返納の切り出し方の記事もあります。
05よくある質問
ふだん運転しない親も、認知機能検査を受けなければいけないの?
はい。免許証の更新期間が満了する日に75歳以上の人は、運転する頻度にかかわらず、更新するには検査を受ける必要があります。ただし、満了日前6か月以内に医師の診断書を提出した場合などは、受検が免除されます(警察庁Q&A)。
「認知症のおそれがある」と判定されたら、すぐ免許は取り消されるの?
いいえ。すぐには取り消されません。警察から連絡があり、専門医の診断を受けるか、医師の診断書を提出します。認知症と診断された場合に、聴聞などの手続きを経て取消しや停止になります。検査は手数料を払えば受け直せます(警察庁)。
検査は何分くらいかかるの?
手がかり再生では、16種類の絵を4つずつ、1回おおむね1分で4回見せます。数字に線を引く課題(30秒を2回)をはさみ、ヒントなしとヒントありで各3分答えます。時間の見当識は2分です(警察庁の進行要領)。全体の所要時間は会場の案内で確認してください。
親が認知症と診断されているのに運転を続けている。どこに相談すればいい?
運転免許試験場・センターにある安全運転相談窓口か、近くの警察署に相談できます(警察庁Q&A)。あわせて、かかりつけ医や地域包括支援センターにも相談し、運転をやめた後の移動手段を一緒に考えておくと安心です。
出典
- 警察庁. 認知機能検査について(2026年10月7日閲覧). https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/ninchi.html
- 警察庁. 認知機能検査に関するQ&A(2026年10月7日閲覧). https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/ninti/faq_r03.html
- 警察庁. 認知機能検査 進行要領(令和7年版). https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/ninti/sinkoyoryo_r07.pdf
- 警察庁. 認知機能検査の採点方法(2026年10月7日閲覧). https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/ninti/saiten_r03.html
- 警察庁. 高齢運転者対策の概要. https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/pdf/r08_koureiuntengaiyou.pdf
- 警察庁交通局運転免許課 (2026). 運転免許統計(令和7年版). https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/r07main.pdf
- Inada, H., Tomio, J., Nakahara, S., & Ichikawa, M. (2023). Association between mandatory cognitive testing for license renewal and motor vehicle collisions and road injuries. Journal of the American Geriatrics Society, 71(4), 1145-1155. https://doi.org/10.1111/jgs.18157
- Ichikawa, M., Inada, H., & Nakahara, S. (2024). Revisiting Older Drivers' Risks of At-fault Motor Vehicle Collisions in Japan. Journal of Epidemiology, 34(6), 295-300. https://doi.org/10.2188/jea.JE20230217


