体と健康

親の目が見えにくくなった。白内障の手術で転倒や事故は減る?

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わかっている度 ★★☆ 中研究6本・公的資料0件を整理出典照合済み(2026-10-12)
図面の上に置かれた丸い眼鏡
Photo: Simon Q from United Kingdom / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品・サービスの紹介はしていません。出典は末尾)。

新聞を顔に近づけて読む。夕方の段差でつまずく。そんな親の姿を見て、目のことが気になった人もいると思います。白内障の手術のあと、転倒や車の事故が減ったという研究はあります。ただし、差がなかった研究もあり、結果はそろっていません。

3行でわかる

  1. オーストラリアの研究では、両目の白内障の手術のあと、転倒が年1.17回から0.41回に減りました。
  2. アメリカの保険データの研究では、手術から1年の転倒・骨折のリスクに差はありませんでした。
  3. 受けるかどうかは親が決めることです。まず困っている場面を聞き、受診の付き添いを申し出ます。

01 結論から言うと白内障の手術で、親の転倒や事故は減る?

減ったという研究と、差がなかった研究の両方があります。見え方が良くなることは多くの研究で一致していますが、転倒・事故・物忘れまで減るかは、まだ言い切れません。

白内障は、目の中のレンズ(水晶体)がにごり、見えにくくなる状態です。手術でにごったレンズを取り出し、人工のレンズに入れ替えます。

見えにくいと、段差に気づきにくくなります。車の運転や、人との会話にも影響します。そこで研究者は「手術のあと、転倒や事故が減るか」を調べてきました。ただ、ここで紹介する研究はどれも、くじ引きで手術を決めた実験ではありません。手術を受けた人と受けなかった人の比較や、同じ人の手術前後の比較です。

02 研究とデータでわかっていること手術の前と後で、転倒や事故はどう変わった?

オーストラリアの研究では、手術後に転倒も車の事故も減っていました。一方、アメリカの研究では、転倒・骨折のリスクに差がありませんでした。認知症のリスクも、研究によって結果が違います。

年1.17回→0.41回両目の手術の前と後の、1人あたりの転倒の回数(オーストラリアの65歳以上409人、2013〜16年に手術を紹介された人)
61%減1つ目の目の手術のあとの、車の事故の件数(手術前の1年との比較。西オーストラリア州の60歳以上の運転者2,849人、2003〜15年)
差なし手術から1年の転倒・骨折のリスク(アメリカの公的医療保険の66歳以上、2019〜21年のデータ)
約3割低い手術を受けた人の認知症のリスク(ハザード比0.71。アメリカの65歳以上3,038人)

Keayら(2022)[1]

両目に白内障がある人の転倒は、手術前に年1.17回でした。1つ目の目の手術後は年0.81回、2つ目の手術後は年0.41回でした(年齢と性別を調整した値)。著者らは、転倒を減らすには両目の手術が必要だと考えています。

対象: オーストラリアの8つの公立病院の眼科に、両目の手術のために紹介された65歳以上409人(平均75.4歳) / 限界: 手術を受けなかった人との比較はありません。最後まで追えた118人に限ると、1つ目の手術の前後で転倒の回数はほぼ同じでした。

Thompsonら(2026)[2]

手術を受けなかった人が1年のうちに転倒・骨折で受診する確率は8.86%でした。手術を受けた人との差は−0.15ポイントで、統計的な差はありませんでした。

対象: アメリカの公的医療保険(メディケア)に入る66歳以上のうち、2019年に未治療の白内障があった人 / 限界: 受診の記録に残った転倒だけを数えています。追跡は1年だけです。

Meulenersら(2019)[3]

1つ目の目の手術のあと、運転中の事故の件数は、手術前の1年に比べて61%少なくなりました。2つ目の手術のあとの1年は、同じく23%少なくなりました。

対象: 西オーストラリア州で両目の手術を受けた60歳以上の運転者2,849人 / 限界: 記録をつなげて調べた観察研究です。運転の量などは調整されていますが、日本の道路事情とは違います。

Leeら(2022)[4]

白内障の手術を受けた人は、受けなかった人に比べて、認知症になるリスクが約3割低いという関連がありました(ハザード比0.71)。見え方を良くしない緑内障の手術では、このような関連は見られませんでした。

対象: アメリカ・ワシントン州の65歳以上で、白内障か緑内障の診断があった3,038人 / 限界: 観察研究で、参加者の91%が白人でした。健康な人ほど手術を受けやすいという偏りが残る可能性があります。

Li・Zhu(2024)[5]

台湾・日本・イギリス・韓国・アメリカの5つの研究(計720,075人)をまとめると、手術と認知症全体のリスクの間に統計的な差はありませんでした(ハザード比0.85)。アルツハイマー型認知症に限ると、リスクは低くなっていました(ハザード比0.58)。

対象: 白内障の人を追った5つのコホート研究(日本の研究1本を含む) / 限界: 研究の数が少なく、それ以前のまとめの分析とは結論が違っています。

見えにくさそのものと物忘れの関係では、110本の研究を集めた整理で、91本(83%)が「見えにくい人ほど認知機能が低い・下がりやすい」という関連を報告していました[6]。ただし、多くは関連を見た研究で、見えにくさが原因かどうかはわかっていません。

03 まだわかっていないこと手術で転倒や物忘れを防げると、なぜ言い切れない?

研究の結果がそろっておらず、くじ引きで比べた研究や日本の研究も少ないためです。手術を受けた人がもともと元気だった可能性も、取り除ききれていません。

  • 転倒が減るかどうか。オーストラリアの研究では減り、アメリカの保険データの研究では差がありませんでした[1][2]。数え方(本人の報告か、受診の記録か)の違いも影響しているかもしれません。
  • 認知症を予防できるか。1つの研究では関連があり、まとめの分析では認知症全体に差がありませんでした[4][5]。
  • 日本の高齢者で、車の事故が減るか。今回確認できた研究は西オーストラリア州のものでした[3]。
  • どのくらい見えにくくなったら手術を考えるのがよいか。これは目の状態と暮らしによるので、眼科医と相談して決めることです。

04 親と一緒にできること見えにくそうな親に、どう声をかける?

「手術を受けて」と結論から迫らず、困っている場面を聞くところから始めます。受診や手術を決めるのは親です。子どもは付き添いや、暮らしの工夫を一緒に考える役に回ります。

1

困っている場面を、責めずに聞く

「最近、細かい字とか、夜の運転で見えにくいことない?私も老眼が進んで困っててさ」と、自分の話も添えて聞きます。「見えてないでしょ」と決めつける言い方は避けます。

目安 電話や帰省のときに5分

2

受診は、付き添いを申し出る形で

「一度、目を診てもらうのに付き添おうか。手術するかどうかは、話を聞いてから決めればいいし」と、決めるのは親だと伝えます。どこに行けばいいか迷う場合は、かかりつけ医に相談してもらいます。

目安 親が「行ってみようか」と言ったときに

3

家の暗い場所と段差を一緒に見る

廊下や玄関、夜にトイレへ行く道を、親と一緒に歩いてみます。暗い所や見えにくい段差があれば、照明や目印を親と相談して決めます。家の中で転びやすい場所は親の転倒を防ぐには?にまとめています。

目安 帰省のときに15分

4

夜や雨の運転の話は、取り上げる話にしない

「夕方は見えにくいって聞くけど、どう?」と、親の感じ方を先に聞きます。運転で気になるサインは親の運転が心配なときに見るサインで整理しています。

目安 同乗したときに

05よくある質問

白内障の手術をすると転倒は減る?

研究で結果が分かれています。オーストラリアの65歳以上409人の研究では、両目の手術のあと転倒が年1.17回から0.41回に減りました。一方、アメリカの66歳以上の保険データの研究では、手術から1年の転倒・骨折のリスクに差はありませんでした。

白内障の手術で認知症は予防できる?

予防できるとは言えません。アメリカの研究では手術を受けた人で認知症のリスクが約3割低かったものの、5つの研究をまとめた分析では、認知症全体のリスクに統計的な差はありませんでした。どちらも観察研究です。

親が目の受診を嫌がるときはどうする?

「手術を受けて」と結論から迫らず、困っている場面を聞くところから始めます。受診するかどうかは親が決めることです。付き添いを申し出たり、かかりつけ医に相談してもらったりする形にすると、親が選びやすくなります。

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出典

  1. Keay L, et al. (2022). The incidence of falls after first and second eye cataract surgery: a longitudinal cohort study. Medical Journal of Australia, 217(2), 94-99. https://doi.org/10.5694/mja2.51611
  2. Thompson AC, et al. (2026). The association of cataract surgery with risk of falls and fractures among Medicare enrollees with cataract. Journals of Gerontology Series A, 81(3), glag002. https://doi.org/10.1093/gerona/glag002
  3. Meuleners LB, et al. (2019). The impact of first- and second-eye cataract surgery on motor vehicle crashes and associated costs. Age and Ageing, 48(1), 128-133. https://doi.org/10.1093/ageing/afy156
  4. Lee CS, et al. (2022). Association Between Cataract Extraction and Development of Dementia. JAMA Internal Medicine, 182(2), 134-141. https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2021.6990
  5. Li Q, Zhu L. (2024). Association of cataract surgery with risk of dementia: a meta-analysis and systematic review of cohort studies with 720,075 participants. Archives of Medical Science, 20(5), 1720-1726. https://doi.org/10.5114/aoms/193394
  6. Nagarajan N, et al. (2022). Vision impairment and cognitive decline among older adults: a systematic review. BMJ Open, 12(1), e047929. https://doi.org/10.1136/bmjopen-2020-047929