親との話し方

正月に親と「もしものとき」の話をしたい。人生会議(ACP)の始め方

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わかっている度 ★★☆ 中研究10本・公的資料0件を整理出典照合済み(2026-10-09)
ティーポットとカップ、受け皿がそろった陶器の茶器
Photo: Unknown author / CC BY 4.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品・サービスの紹介はしていません。出典は末尾)。

正月に家族がそろうと、「親が元気なうちに、もしものときのことを聞いておきたい」と思う人は多いはずです。人生会議(ACP)は、書類を作ることではなく、親が大切にしていることを聞き、くり返し話し合うことです。研究では、話し合っておくと親の希望が守られやすくなり、残された家族の心の負担も軽くなっていました。

3行でわかる

  1. オーストラリアの80歳以上の入院患者の研究では、人生会議の支援を受けた側で亡くなった人の86%で希望が知られ守られました(受けない側では30%)。
  2. 家族が親の治療の希望を当てられたのは68%でした。「話さなくてもわかる」とは限りません。
  3. 切り出すときは、治療の選択より先に「大切にしていること」を聞き、決めるのは親だと伝えます。

01結論から言うと

人生会議は、親が元気なうちに始めてよい話し合いです。親の希望が守られやすくなり、家族の迷いや心の負担を軽くする効果が研究で示されています。急がず、1回で決めず、親のペースで進めます。

人生会議は、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の日本での愛称です。厚生労働省がこの愛称を決め、普及を進めています[10]。

国際的な専門家の合意では、ACPは「どの年齢・どの健康状態の大人も」対象です。自分の価値観や人生の目標、これからの医療についての希望を理解し、共有していく過程とされています[8]。病気が重くなってからではなく、元気な時期に始めてよい話し合いです。

ただし、話し合えば必ず希望どおりの最期になる、という単純な話でもありません。効果がはっきりしている点と、まだ分かれている点の両方を、次に見ていきます。

02研究とデータでわかっていること

話し合いをした人では、希望が家族や医療者に知られ、守られる割合が高くなりました。家族の不安や抑うつも少なくなっていました。一方で、家族の「たぶんこうだろう」は3回に1回ほど外れていました。

86%人生会議の支援を受ける側にくじで分けられ、6か月以内に亡くなった人のうち、希望が知られ守られた割合(受けない側は30%。オーストラリアの80歳以上、2010年発表)
68%家族など代わりに決める人が、本人の治療の希望を当てられた割合(16研究・2,595組のまとめ、2006年発表)
3人に1人以上家族などが本人に代わって治療を決めたあと、つらい気持ちが残った割合(40研究・2,854人のまとめ、2011年発表)
92.0%医師が人生会議を紹介した65歳以上の外来患者のうち、話し合いをした割合(案内の紙だけの人は26.1%。日本、48人、2024年発表)

Deteringら(2010)[1]

80歳以上の入院患者309人を、人生会議の支援を受ける人と受けない人にくじで分けて比べました。6か月以内に亡くなった56人では、希望が知られ守られた割合が86%(29人中25人)と30%(27人中8人)でした。亡くなった人の家族に約3か月半後に聞くと、強い抑うつ症状がある人は支援を受けた側で0人、受けない側で8人(30%)でした。

対象: オーストラリア・メルボルンの大学病院の80歳以上の入院患者309人 / 限界: 1つの病院の研究で、入院中に専門の支援者が話し合いを手伝っています。家族だけでの話し合いと同じ効果とは限りません。

Shalowitzら(2006)[2]

家族など代わりに決める人が、本人の治療の希望をどのくらい当てられるかを調べた16の研究をまとめると、当たった割合は68%でした。本人が代わりの人を指名していても、前に希望を話し合っていても、当てる精度は上がっていませんでした。

対象: 16研究・2,595組(回答の組19,526件) / 限界: 多くは「もしこうなったら」という仮の場面での質問です。話し合いの中身や回数までは比べていません。

WendlerとRid(2011)[3]

本人に代わって治療を決めた人への影響を調べた40の研究をまとめると、数量で調べた研究では少なくとも3人に1人に、ストレスや罪悪感、「あれでよかったのか」という迷いが残っていました。本人の希望に沿う治療を知っていることが、負担を軽くするとよく挙げられていました。

対象: 40研究・2,854人(半数以上が家族) / 限界: 40研究中32研究が米国のデータで、日本の家族に同じように当てはまるかはわかりません。

Miyashitaら(2021)[7]

福島県の65歳以上39人に聞き取りをすると、家族を介護した経験から、自分の最期について考えるようになった人がいました。家族と対等な関係であることが、話し合いのハードルを下げていました。一方で、話し合っていても、最後は子どもの判断に任せてよいと考える人もいました。

対象: 日本の地域の病院の外来に通う65歳以上39人 / 限界: 聞き取りの研究で、どのくらいの人に当てはまるかは示していません。

Yoshihara-Kuriharaら(2024)[6]

日本の総合診療の外来で、研修を受けた医師が人生会議を紹介した65歳以上の外来患者は、案内の紙だけを渡された人より話し合いをした割合が高くなりました(92.0%と26.1%)。不安が強まることはありませんでした。

対象: 日本の外来患者48人のくじ分け試験 / 限界: 48人と人数が少ない試験です。

地域で行う講座や話し合いの会などの取り組みをまとめた分析もあります。こうした取り組みに参加した人は、人生会議に関わる行動(話し合いや書き残すこと)をとる割合が、そうでない人の2.24倍でした。中でも、グループで話し合う形や講座の形が比較的よい結果でした[5]。ただし研究ごとの差が大きく、数字は目安です。

03まだわかっていないこと

話し合いが「本人の望みどおりの医療」に結びつくかは、研究で結果が分かれています。日本の家族が自宅で話し合ったときの効果を確かめた研究も、まだほとんどありません。

  • 2010〜2020年の69のくじ分け試験をまとめた研究では、家族の負担が減るなどの結果はよくそろっていましたが、本人の望みどおりの医療を受けられたかは結果がそろっていませんでした[4]。
  • 80の研究のまとめ(系統的レビュー)をさらにまとめた研究では、人生会議によい印象を持っていても、実際の話し合いにつながるとは限らないとされ、効果を示す証拠も限られていて質が低いと評価されています[9]。
  • 正月のように家族が集まる場で話すことの効果、家族だけで話し合ったときの効果を比べた研究は見つかりませんでした。

04親と一緒にできること

治療の選択から入らず、親が大切にしていることを聞くところから始めます。決めるのは親で、子どもは聞き役です。話したくない日は、無理に続けません。

1

「大切にしていること」から聞く

「延命治療はどうする?」から入ると、親は身構えます。「これからも続けたいことって何?」「どんな毎日だと、自分らしいと思う?」と、暮らしの話から聞きます。代わりに決める家族の負担を軽くするのは、本人の考えを知っていることでした[3]。

目安 正月のお茶の時間に10分

2

自分の気持ちとして、きっかけを話す

親の年齢や体の心配を理由にすると、責められたように感じることがあります。「知り合いの家で急に入院があって、うちも聞いておきたいと思ったんだ。お父さんの考えを知っておきたくて」と、自分の気持ちとして伝えます。介護の経験が話すきっかけになった人もいました[7]。

目安 話を切り出すとき

3

「決めるのはお母さん」と伝え、聞き役に回る

「どうしてほしいか決めるのはお母さんだから、私は聞いておきたいだけ」と伝えます。子どもに任せると言われたときも、「任せてもらえるなら、お母さんならどうしたいかを知っておきたい」と、理由や気持ちを聞きます。答えを急がず、「今日はここまでにしよう」で終えて大丈夫です。

目安 1回30分まで

4

聞いたことを短く書き、次に会ったときに確かめる

家族の推測は3回に1回ほど外れていました[2]。聞いたことは日付と一緒に短くメモし、「この前こう言ってたけど、今も同じ?」と時々確かめます。気持ちは変わってよいものです。帰省で一緒に確かめたいことは帰省チェックリストにもまとめています。

目安 帰省のたびに5分

5

医療や介護のことは、専門職と一緒に考える

病気や治療の具体的なことは、親のかかりつけ医に「家族で話し始めた」と伝えて相談できます。介護のことは、親が住む地域の地域包括支援センターが相談先です。お金や住まいの希望も話題にしたいときは、お金の話をいつするかや施設の話の切り出し方も参考になります。

目安 次の受診や相談のとき

05よくある質問

人生会議(ACP)とは何をすること?

これからの医療やケアについて、大切にしていること・望むこと・望まないことを考え、家族や医療者と話し合い、共有していくことです。書類を作ることが目的ではなく、話し合いをくり返す過程そのものを指します。元気なうちから、どの年齢でも始められます。

親が嫌がったら、無理に話さない方がいい?

無理に進める必要はありません。決めるのは親本人です。「今日は話したくない」も大切な意思なので、その気持ちを受け止め、別の機会に改めて聞きます。研究のまとめでも、話し合いをくり返すことが効果的な取り組みの特徴として挙げられています。

一度話せば、親の希望はわかる?

一度では十分にわからないことがあります。家族などが本人の治療の希望を当てられた割合は68%で、前に話し合っていても当てる精度は上がらなかったという研究のまとめがあります(多くは仮の場面での研究)。希望の理由や大切にしていることも聞き、時々確かめ直します。

人生会議は何歳から始めればいい?

決まった年齢はありません。国際的な専門家の合意では、ACPは「どの年齢・どの健康状態の大人も」対象とされています。親が元気で、ゆっくり話せる時期の方が、親自身が考えて決める余裕を持てます。

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出典

  1. Detering KM, Hancock AD, Reade MC, Silvester W. (2010). The impact of advance care planning on end of life care in elderly patients: randomised controlled trial. BMJ, 340, c1345. https://doi.org/10.1136/bmj.c1345
  2. Shalowitz DI, Garrett-Mayer E, Wendler D. (2006). The accuracy of surrogate decision makers: a systematic review. Archives of Internal Medicine, 166(5), 493-497. https://doi.org/10.1001/archinte.166.5.493
  3. Wendler D, Rid A. (2011). Systematic review: the effect on surrogates of making treatment decisions for others. Annals of Internal Medicine, 154(5), 336-346. https://doi.org/10.7326/0003-4819-154-5-201103010-00008
  4. McMahan RD, Tellez I, Sudore RL. (2021). Deconstructing the Complexities of Advance Care Planning Outcomes: What Do We Know and Where Do We Go? A Scoping Review. Journal of the American Geriatrics Society, 69(1), 234-244. https://doi.org/10.1111/jgs.16801
  5. Tan YY, Fu S, Fong KY, et al. (2026). Community-Based Interventions for Initiating Early End-of-Life Conversations in Nonterminally Ill Adults: A Systematic Review. Campbell Systematic Reviews, 22. https://doi.org/10.1177/18911803261435899
  6. Yoshihara-Kurihara H, Hori H, Fuse A, et al. (2024). Effectiveness of initiating advance care planning among older outpatients through intervention by physicians trained in a model discussion video: A randomized controlled trial. Geriatrics & Gerontology International, 24, 859-866. https://doi.org/10.1111/ggi.14932
  7. Miyashita J, Kohno A, Yamamoto Y, et al. (2021). How Psychosocial Factors Contribute to Japanese Older Adults' Initiation of Advance Care Planning Discussions: A Qualitative Study. Journal of Applied Gerontology, 40(10), 1180-1188. https://doi.org/10.1177/0733464820911537
  8. Sudore RL, Lum HD, You JJ, et al. (2017). Defining Advance Care Planning for Adults: A Consensus Definition From a Multidisciplinary Delphi Panel. Journal of Pain and Symptom Management, 53(5), 821-832.e1. https://doi.org/10.1016/j.jpainsymman.2016.12.331
  9. Jimenez G, Tan WS, Virk AK, et al. (2018). Overview of Systematic Reviews of Advance Care Planning: Summary of Evidence and Global Lessons. Journal of Pain and Symptom Management, 56(3), 436-459.e25. https://doi.org/10.1016/j.jpainsymman.2018.05.016
  10. Miura H, Goto Y. (2026). Shared Decision Making and Advance Care Planning in the Context of Promoting Home Medical Care in Japan: A Narrative Review. Geriatrics & Gerontology International. https://doi.org/10.1111/ggi.70423