親が認知症と診断された。家族がまず知っておきたいこと、最初の1か月にすること

親が認知症と診断されると、頭が真っ白になったり、何から手をつければいいのかわからなくなったりしますよね。最初の1か月にすることは3つです。地域包括支援センターに相談する、親の気持ちと希望を聞く、家族自身も学んで支えを得る。急いで全部を決める必要はありません。
3行でわかる
- 最初の相談先は、親が住む地域の地域包括支援センターです。地域でどんな支えが使えるかを、まとめて聞けます。
- 認知症になってもできることや、やりたいことはあります。国も2024年施行の認知症基本法で、本人の意思を大事にする考え方を示しています。
- 家族が学びと相談の支えを受けると、家族のうつ症状が減り、施設に入る時期が遅くなったという海外の試験があります。
01結論から言うと
診断後の最初の1か月は「相談先につながる」「親の希望を聞く」「家族が学ぶ」の3つに絞ります。治療や薬のことは医師に任せ、家族は暮らしの段取りを整えます。
診断はゴールではなく、支えを使い始める入り口です。政府広報オンラインは、認知症カフェには、早期診断のあとの何も支援がない「空白の期間」を満たし、孤立を防ぐ役割があると説明しています[1]。
2024年1月には「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が施行されました。国は、認知症になっても一人ひとりにできることややりたいことがあり、地域で自分らしく暮らし続けられるという「新しい認知症観」を示しています[1]。家族が先回りして全部を決めるより、親と一緒に決めることが出発点になります。
病気の見通しや治療、薬については、この記事では扱いません。診断した医師やかかりつけ医に聞いてください。
02研究とデータでわかっていること
日本の65歳以上の約12%が認知症と推計され、めずらしい病気ではありません。家族が学びと相談の支えを受けると、家族の心の負担が軽くなることは、複数の試験とそのまとめで確かめられています。
国の推計では、65歳以上のうち認知症の人は約12%、その前の段階と考えられる軽度認知障害(MCI)の人は約16%でした(2022年度の調査)[1]。同じ立場の家族は、決して少なくありません。
診断のあと、家族が使える主な公的な支えは次のとおりです[1][2]。
- 地域包括支援センター: 市町村などに置かれた、認知症に関する相談の窓口
- 認知症ケアパス: 市町村ごとに、いつ・どこで・どんな医療や介護を受けられるかの流れをまとめた冊子やページ
- 認知症カフェ: 本人や家族、地域の人が誰でも参加でき、気軽に相談できる場
- ピアサポート・本人ミーティング: 認知症の本人同士が話し合い、相談し合う取り組み
- 認知症初期集中支援チーム: 医療と介護の専門職と医師が家を訪ね、おおむね6か月、集中的に支える仕組み
初期集中支援チームの対象は、40歳以上で家で暮らす人のうち、医療や介護のサービスにつながっていない・途中でやめてしまった人などです。サービスを使っていても、症状への対応に家族が困っている場合も対象になります[2]。
Mittelmanら(2006)[4]
配偶者を介護する家族に、6回の個別・家族カウンセリング、支え合いのグループへの参加、いつでも使える電話相談を組み合わせて提供しました。支援を受けた家族の本人は、施設に入る割合が28.3%低く、施設に入るまでの期間は推定で557日長くなりました。
対象: 米国(ニューヨーク大学)の、アルツハイマー病の人を在宅で介護する配偶者406人 / 限界: 介護者は配偶者で、子どもが介護する場合に同じ効果があるかはわかりません。
Livingstonら(2013)[5]
認知症についての知識、困った行動の理解と対応、気持ちの切り替え、リラックス法、先の計画づくりなどを8回で学ぶ家族向けの支援で、家族の不安・うつの点数が下がりました。うつと判定される状態になる見込みも低くなりました(オッズ比0.24)。
対象: 英国(ロンドンとエセックス)の、認知症の家族を介護する260人 / 限界: 本人の生活の質には、はっきりした差は出ませんでした。
Martínez-Montásら(2026)[6]
認知症についての学びと、対応の練習を組み合わせた家族向けの支援を比べた12のくじ引き試験(効果を公平に比べる実験)をまとめました。支援を受けた家族は、受けなかった家族より介護の負担感が軽くなっていました(効果の大きさは小〜中程度)。
対象: 認知症の人を介護する家族を対象にした12試験のまとめ / 限界: 何と比べたかで効果の大きさが変わり、その分析は少ない試験に基づいています。
03まだわかっていないこと
家族への支援の研究は海外の配偶者介護が中心です。離れて暮らす子どもが介護する場合や、日本の制度の中で同じ効果があるかは、まだはっきりしていません。
- 子どもが、離れて暮らしながら支える場合の効果(紹介した試験は配偶者や同居の家族が中心です)[4][5]
- 日本の認知症カフェや初期集中支援チームを使った家族と、使わなかった家族の比較(当メディアが調べた範囲では見つかりませんでした)
- どんな内容・回数の支援がいちばん効くか(まとめの中でも結果に幅があります)[6]
04親と一緒にできること
最初の1か月は、相談先につながり、親の希望を聞き、運転とお金の話の入り口をつくります。全部を一度に決めず、親が「自分で決めた」と感じられる順番で進めます。
地域包括支援センターに、家族だけでも相談する
「親が認知症と診断されました。何から始めればいいですか」と聞くだけで大丈夫です。認知症ケアパスや認知症カフェなど、地域の支えを教えてもらえます。センターの役割は地域包括支援センターの記事、申請は要介護認定の記事にまとめています。
目安 診断から1週間以内に電話1本
親の気持ちと、続けたいことを聞く
結論を伝えるより先に、気持ちを聞きます。「診断を聞いて、どんな気持ちだった?」「これからも続けたいことって何かある?」と、親が話す側になる問いかけにします。答えが出なくても、聞いてくれたこと自体が安心につながります。
目安 1〜2週目に、時間をとって1回
運転とお金は「一緒に考えよう」と切り出す
警察庁は、認知症と診断された場合は聴聞などの手続きを経て免許の取消しか停止になると説明しています[3]。「車がなくなっても、買い物や病院に困らない方法を一緒に考えたい」と、移動の手段から話します。通帳や手続きのことは親とお金の話の記事も参考になります。
目安 2〜3週目。1回で決めず、何回かに分けて
家族自身が、学びと相談の場を1つ持つ
試験で効果があったのは、知識を学び、困ったときに相談できる支えでした[4][5]。認知症カフェや、センターが案内する家族向けの集まりに1回参加してみます。きょうだいとは「一人で抱えないで、役割を分けよう」と話しておきます。
目安 1か月以内に1回
次の受診で聞きたいことを、親と一緒にメモする
病気の見通し、日常で気をつけること、薬のことは医師に聞く内容です。「次の診察で先生に聞きたいこと、一緒に書いておこうか」と誘い、親自身の質問も入れます。
目安 次の受診の前に10分
05よくある質問
親が認知症と診断されたら、家族はまずどこに相談すればいい?
親が住んでいる地域の地域包括支援センターです。認知症ケアパスや認知症カフェなど、地域の支えをまとめて教えてもらえる最初の窓口です。病気や治療のことは、診断した医師やかかりつけ医に聞きます。
認知症初期集中支援チームとは?
医療と介護の専門職と医師がチームで家を訪ね、おおむね6か月、集中的に支える仕組みです。対象は40歳以上で家で暮らす人のうち、医療や介護のサービスにつながっていない人などです。相談は地域包括支援センターでできます。
認知症と診断されたら、親の運転はどうなる?
警察庁は、認知症と診断された場合、聴聞などの手続きを経て免許の取消しか停止になると説明しています。いきなり取り上げる話にせず、移動の手段をどう確保するかを親と一緒に考えるところから始めます。
診断のあと、家族が気持ちの面でつらいときは?
めずらしいことではありません。英国の試験では、家族向けの8回の学びと相談で、家族のうつ症状が減りました。地域包括支援センターや認知症カフェでは、家族自身の相談もできます。
出典
- 内閣府政府広報室(取材協力: 厚生労働省) (2025). 知っておきたい認知症の基本. 政府広報オンライン(2025年1月16日). https://www.gov-online.go.jp/article/202501/entry-7013.html
- 厚生労働省. 認知症初期集中支援チーム(令和4年度 認知症施策・地域介護推進課 実施状況調べ). https://www.mhlw.go.jp/content/001061147.pdf
- 警察庁. 認知機能検査について. https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/ninchi.html
- Mittelman MS, Haley WE, Clay OJ, Roth DL (2006). Improving caregiver well-being delays nursing home placement of patients with Alzheimer disease. Neurology, 67(9), 1592-1599. https://doi.org/10.1212/01.wnl.0000242727.81172.91
- Livingston G, et al. (2013). Clinical effectiveness of a manual based coping strategy programme (START, STrAtegies for RelaTives) in promoting the mental health of carers of family members with dementia: pragmatic randomised controlled trial. BMJ, 347, f6276. https://doi.org/10.1136/bmj.f6276
- Martínez-Montás GF, Iniesta-Sepúlveda M, Colón-Santana OR, Moreta-Manzueta GE (2026). Effectiveness of Psychoeducational Interventions for Informal Caregivers of People With Dementia: A Systematic Review and Meta-Analysis. Journal of Applied Gerontology. https://doi.org/10.1177/07334648261490430


