離れて暮らす母が電話で同じ話を何度もする。認知症のサイン?

電話で同じ話を何度もするだけでは、認知症かどうかは判断できません。ただ、政府広報オンラインは「同じことを何度も言う・問う」を、認知症を疑う言動の例に挙げています。電話の声だけで決めつけず、帰省したときに暮らしの様子も見て、気になる言動がいくつか重なるなら相談を考えましょう。
3行でわかる
- 同じ話の繰り返しは、認知症を疑う言動の例の1つですが、それだけでは判断できません。
- 物忘れが出はじめた段階では、薬の管理やお金のやりくりなど、暮らしの作業に変化が出やすいことがわかっています。
- 電話では「指摘しない・記録する」、帰省では「暮らしを見る」。気になる言動が複数あれば、かかりつけ医か地域包括支援センターへ。
01結論から言うと
電話での繰り返しは相談のきっかけにはなりますが、それだけで認知症とは言えません。帰省のときに暮らしの変化を見て、気になる言動が複数あれば相談しましょう。
政府広報オンラインは、認知症ではないかと思われる言動の例を挙げ、「思い当たる言動が複数ある場合」に専門医や専門家への相談をすすめています[1]。電話に関係するものもあります。
- 今切ったばかりなのに、電話の相手の名前を忘れる
- 同じことを何度も言う・問う・する
- 約束の日時や場所を間違えるようになった
- 話のつじつまが合わない
一方で、うつやせん妄(急に起こる意識の混乱)、甲状腺の病気など、認知症に似た状態もあります[1]。年齢による物忘れとの違いは親の物忘れは年のせい?認知症のはじまりとの違いで詳しく整理しています。
02研究とデータでわかっていること
家族など身近な人の気づきは、ごく早い段階の変化をとらえる手がかりになります。物忘れが出はじめた段階では、薬・お金・約束など、暮らしの作業に変化が出やすいことがわかっています。
厚生労働省(2024)[2]
2022年の日本の65歳以上では、認知症の人が12.3%、その手前のMCIの人が15.5%と推計されました。合わせると約28%です。
対象: 日本の4地域の調査をもとにした推計 / 限界: 4地域の結果を全国に当てはめた数字です。
Galvinら(2005)[3]
家族など身近な人に、本人の記憶・時間や場所の感覚・判断・暮らしの様子について8つの質問をすると、ごく軽い認知症の人とそうでない人を、かなりの精度で区別できました(2項目以上あてはまる場合で、見つけられた割合74%、正しく除外できた割合86%)。
対象: アメリカの記憶と加齢の研究に参加した180人(認知症なし112人、ごく軽い認知症68人) / 限界: 医師の診察と組み合わせて使う聞き取りで、家族が自分で判定するためのものではありません。
Jekelら(2015)[4]
MCIの人について調べた37本の研究のうち35本で、暮らしの作業の変化が記録されていました。例は、薬の飲み方、電話の使い方、約束を守ること、家の中で物を見つけること、身近な機器の使い方です。お金の管理も、多くの研究で影響が出ていました。
対象: 1999〜2013年に発表された37本の研究のシステマティックレビュー(決められた方法で研究を集めて整理したもの) / 限界: 研究ごとに調べ方が違い、どの変化が最初に出るかまでは決まっていません。
03まだわかっていないこと
電話での繰り返しの回数や頻度が、どのくらいなら相談すべきかという研究上の基準はまだありません。回数で判断するより、ほかの変化と重なるかどうかで考えましょう。
- 電話の会話だけで認知症の始まりを見分けられるかを調べた研究は、ほとんど見つかりませんでした。
- 聞こえにくさや気分の落ち込みなど、ほかの理由で同じ話が増えることもあり、電話だけでは理由を区別できません。
04親と一緒にできること
電話では指摘せずに記録し、帰省のときに暮らしの様子を一緒に見て、気になることが重なれば相談を一緒に決めましょう。どれもお金はかかりません。
電話では指摘せず、メモを残す
「その話、さっきも聞いたよ」とは言わず、初めて聞くつもりで相づちを打ちます。電話のあとに、日付と繰り返した内容を1行だけ書いておきます。
目安 電話のたびに1分・1〜2か月
帰省のときは、暮らしの様子を見る
薬が余っていないか、同じ物がたくさん買われていないか、郵便物や請求書がたまっていないか、冷蔵庫に古い食品が多くないかを、さりげなく見ます。親をテストするような質問はしません。
目安 帰省のとき・30分ほど
親の困りごとから話を始める
「最近、何か不便なことない?私も物忘れが増えてきてさ」と、親が話しやすい形で聞きます。親が気にしていることがあれば、「今度の通院のとき、先生に聞いてみない?」と一緒に考えます。
目安 帰省や電話のとき・5分
気になることが重なれば、相談先を一緒に決める
かかりつけ医がいればそこへ。いなければ、親の住む地域の地域包括支援センターに、家族だけで先に相談することもできます[1]。
目安 気になる言動が複数続いたとき
運転や転倒など、ほかの心配が気になっている場合は、免許返納の話し方や家の中の転倒対策もあわせて読んでみてください。
05よくある質問
電話で同じ話を何度もされたら、指摘したほうがいい?
「さっきも聞いたよ」と正す必要はありません。初めて聞くつもりで相づちを打ち、気になったことは日付と内容をメモしておきましょう。指摘されると、親が話しにくくなることがあります。
同じ話を繰り返すのは、年のせいのこともある?
あります。同じ話を繰り返すことだけで認知症とは判断できません。政府広報オンラインは、気になる言動が複数ある場合に専門医や専門家への相談をすすめています。
電話だけで親の様子はわかる?
電話だけでは、わからないことが多くあります。研究では、物忘れが出はじめた段階で、薬の飲み方やお金の管理、約束を守ることなど暮らしの作業に変化が出やすいことがわかっています。帰省のときに暮らしの様子も見ましょう。
出典
- 政府広報オンライン (2025). 知っておきたい認知症の基本. https://www.gov-online.go.jp/article/202501/entry-7013.html
- 厚生労働省 (2024). 認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計(令和5年度老人保健事業推進費等補助金「認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究」九州大学 二宮利治 より作成). https://www.mhlw.go.jp/content/001279920.pdf
- Galvin, J. E., Roe, C. M., Powlishta, K. K., et al. (2005). The AD8: a brief informant interview to detect dementia. Neurology, 65(4), 559-564. https://doi.org/10.1212/01.wnl.0000172958.95282.2a
- Jekel, K., Damian, M., Wattmo, C., et al. (2015). Mild cognitive impairment and deficits in instrumental activities of daily living: a systematic review. Alzheimer's Research & Therapy, 7, 17. https://doi.org/10.1186/s13195-015-0099-0


