帰省で気づく親の変化。久しぶりに会って「あれ?」と思ったら見る5つのサイン

久しぶりに帰省して、親が小さく見えた。冷蔵庫の中が前と違う。そんな「あれ?」に、どう向き合えばいいか迷う人は少なくありません。研究からは、見た目の老け方よりも「外出・食事・歩き方・お金や電話の管理・物忘れ」といった暮らしの変化が、その後の要介護と関連していることがわかっています。
3行でわかる
- 日本の65歳以上6.7万人の研究では、買い物に1人で行けない、外出が去年より減った、半年で2kg以上やせたなどの人ほど、約3年のうちに要介護の認定を受けやすい関連がありました。
- フランスの研究では、お金や電話、薬の管理といった暮らしの段取りの衰えが、認知症と診断される10年前の時点で、すでに多く見られました。
- 1回の帰省で決めつけず、前回と比べて変わったかを見て、気になれば親が住む地域の地域包括支援センターに相談します。
01結論から言うと
帰省で見るのは、見た目より暮らしの変化です。外出と買い物、体重と食事、立ち上がりと歩き方、お金・電話・薬の管理、同じ質問のくり返しの5つが、研究で将来の要介護や認知症の診断と関連していました。
「年をとったな」と感じる理由は、白髪やしわのような見た目のこともあります。ただ、研究で将来の暮らしにくさと結びついていたのは、毎日の生活の中の変化でした。
どれか1つに当てはまっても、病気と決まるわけではありません。逆に、当てはまらなくても安心とは言い切れません。帰省は、親の暮らしを自分の目で見られる貴重な機会です。決めつけるためではなく、前回と比べて何が変わったかを知るために使います。
02研究とデータでわかっていること
日本の研究では、外出や買い物、歩くこと、体重の変化など25項目の多くが、約3年後の要介護の認定と関連していました。家族の気づきが早い段階の物忘れを見つける手がかりになることも示されています。
日本の研究で使われたのは、国が要介護になるおそれのある人を早く見つけるために使ってきた「基本チェックリスト」をもとにした25の質問です[1]。親が自分で答える形の質問ですが、帰省で家族が目にする場面と重なるものが多くあります。研究の結果を、帰省で見やすい5つに当メディアで整理しました。
- 外出と買い物: 日用品の買い物に1人で行けない(3.36倍)、外出が週1回未満(2.26倍)、外出が去年より減った(2.07倍)
- 体重と食事: 半年で2kg以上体重が減った(1.67倍)、お茶や汁物でむせることがある(1.28倍)
- 立ち上がりと歩き方: 15分続けて歩けない(2.72倍)、手すりや壁につかまらずに階段を上れない(2.64倍)、この1年に転んだ(1.54倍)
- お金・電話の管理: 預貯金の出し入れができない(2.31倍)、電話番号を調べて電話をかけることをしていない(2.15倍)
- 物忘れ: 家族や友人から「いつも同じことを聞く」などの物忘れを指摘される(1.63倍)
倍率は、当てはまらない人と比べて、要介護の認定を受けやすかった程度です。性別と年齢の違いは調整されています[1]。
Watanabeら(2022)[1]
要介護の認定を受けていない日本の高齢者を平均3.1年追うと、9.2%が新たに要介護の認定を受けました。基本チェックリストをもとにした25の質問は、どれも当てはまる人で認定を受ける割合が高くなっていました。
対象: 日本の65歳以上67,398人(JAGES、2016年の調査から追跡、平均73.6歳) / 限界: 25問すべてに答えた比較的元気な人に限られます。国が使う7つの領域の指標では、見つけられる力(感度)が3.9〜45.9%で、当てはまらなかった人からも要介護になる人が出ています。
Pérèsら(2008)[4]
のちに認知症と診断された人は、診断の10年前の時点で、電話・外出の移動・薬・お金の管理の4つの段取りに、すでに不自由が多く見られました。お金の管理に困りごとがあった人は、10年後に認知症と診断されるオッズが2.15倍でした。
対象: フランス南西部の地域住民の研究(PAQUID)で、10年後に認知症と診断された104人と、されなかった882人 / 限界: 観察研究で、不自由があれば認知症になるという意味ではありません。
Amievaら(2008)[5]
アルツハイマー型認知症と診断された人をさかのぼると、物事の知識や考え方の低下は診断の12年前から始まっていました。その後に物忘れの自覚や気分の落ち込みが増え、さらに後で日常生活の不自由が現れ、診断前の最後の3年で目立って進んでいました。
対象: 同じフランスの研究で、14年の間にアルツハイマー型認知症と診断された350人と、比べる350人 / 限界: 平均的な経過で、すべての人が同じ順番をたどるわけではありません。
Friedら(2001)[2]、Studenskiら(2011)[3]
米国の研究では、1年で約4.5kg(10ポンド)の意図しない体重減少、疲れやすさ、握力の低下、歩く速さの低下、活動量の低下のうち3つ以上がそろう状態を「フレイル」と定義しました。フレイルの人は、その後の転倒や入院などが多くなっていました。歩く速さを調べた9つの研究をまとめた分析では、歩くのが速い人ほど長生きする関連があり、秒速0.1m速いごとに死亡の危険度は0.88倍でした。
対象: 65歳以上5,317人(Fried)、65歳以上34,485人(Studenski、参加者の約8割が白人) / 限界: 海外の研究で、歩く速さは専門職が測った数字です。帰省で見た印象とは同じではありません。
Galvinら(2005)[6]
家族などに8つの質問をして、ごく軽い認知症を見分けられるかを調べました。記憶・日付の感覚・判断・日常の段取りについての変化が2つ以上あるとき、ごく軽い認知症の人の74%を見つけ、そうでない人の86%を正しく見分けました。身近な人の気づきが、早い段階の変化を見つける手がかりになるということです。
対象: 米国の物忘れと加齢の研究の参加者(追加の確認は180人) / 限界: 研究の参加者での結果で、一般の家庭でそのまま同じ精度になるとは限りません。
03まだわかっていないこと
帰省のときに家族が変化を確かめると、その後の親の暮らしが良くなるかを調べた研究は見つかりませんでした。年に数回の帰省で、どのくらい変化を見つけられるかもわかっていません。
- 帰省などで家族が変化に気づいて相談につなぐことが、要介護を防いだり遅らせたりするか
- 年に1〜2回しか会わない家族が、変化をどのくらい正しく見分けられるか(研究の多くは本人の回答か、専門職の測定です)
- 当てはまらない人からも要介護になる人が出ています[1]。どの組み合わせを見ればより確かに見つけられるかは、研究によって結果が違います
04親と一緒にできること
問い詰めるより、一緒に過ごしながら見ます。気づいたことは「心配だから」と自分の気持ちとして伝え、続くようなら親と一緒に相談先を決めます。
一緒に買い物や散歩に出て、暮らしぶりを見る
買い物の段取り、歩く速さ、立ち上がりのときの手つきは、一緒に出かけると自然に見えます。「スーパーまで一緒に行かない?荷物持つよ」と誘うと、確かめる雰囲気になりません。
目安 帰省中に1回、30分ほど
気づいたことを、責めずに気持ちとして伝える
「前より少しやせた気がして、ちょっと心配になったんだけど、ごはんはどう?」のように、自分の気持ちと質問で伝えます。「できなくなった」と指摘するより、親が自分の言葉で話しやすくなります。
目安 落ち着いて話せる時間に5分
気づいたことをメモし、次の帰省で比べる
1回の様子では、疲れや体調で決めつけられません。日付と気づいたことをスマホに残し、次の帰省や電話で同じ点を見ます。確かめる項目は帰省チェックリストにまとめています。
目安 帰省のたびに5分
続くときは、親と一緒に相談先を決める
物忘れや体の変化が続くときは、かかりつけ医か、親が住む地域の地域包括支援センターに相談できます。「お母さんがどうしたいかを一番にしたいから、一回話を聞きに行ってみない?」と、決めるのは親だと伝えます。物忘れの見分け方は親の物忘れは年のせい?、やせてきたときは親の食が細くなったも参考にしてください。
目安 同じ変化が2回以上続いたら
05よくある質問
帰省で親が老けたと感じたら、まず何を見ればいい?
見た目より、暮らしの変化を見ます。外出や買い物が減っていないか、半年で2kg以上やせていないか、立ち上がりや歩き方、お金や電話や薬の管理、同じ質問のくり返しの5つです。日本の研究では、こうした項目に当てはまる人ほど、その後に要介護の認定を受けやすい関連がありました。
当てはまるものがあったら、認知症や病気ということ?
いいえ。当てはまっても病気と決まるわけではなく、当てはまらなくても安心とは言い切れません。研究でわかっているのは、要介護になりやすさとの関連です。気になる変化が続くときは、かかりつけ医か、親が住む地域の地域包括支援センターに相談してください。
帰省の短い時間で、親の変化を見分けられる?
1回の帰省だけで見分けるのは難しいです。大事なのは、前回の帰省や去年と比べて変わったかどうかです。気づいたことをメモに残し、次の帰省や電話で同じ点を見ると、一時的な不調か続いている変化かがわかりやすくなります。
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出典
- Watanabe R, Tsuji T, Ide K, et al. (2022). Predictive validity of the modified Kihon Checklist for the incidence of functional disability among older people: A 3-year cohort study from the JAGES. Geriatrics & Gerontology International, 22(8), 667-674. https://doi.org/10.1111/ggi.14439
- Fried LP, Tangen CM, Walston J, et al. (2001). Frailty in older adults: evidence for a phenotype. The Journals of Gerontology Series A, 56(3), M146-M156. https://doi.org/10.1093/gerona/56.3.m146
- Studenski S, Perera S, Patel K, et al. (2011). Gait speed and survival in older adults. JAMA, 305(1), 50-58. https://doi.org/10.1001/jama.2010.1923
- Pérès K, Helmer C, Amieva H, et al. (2008). Natural history of decline in instrumental activities of daily living performance over the 10 years preceding the clinical diagnosis of dementia: a prospective population-based study. Journal of the American Geriatrics Society, 56(1), 37-44. https://doi.org/10.1111/j.1532-5415.2007.01499.x
- Amieva H, Le Goff M, Millet X, et al. (2008). Prodromal Alzheimer's disease: successive emergence of the clinical symptoms. Annals of Neurology, 64(5), 492-498. https://doi.org/10.1002/ana.21509
- Galvin JE, Roe CM, Powlishta KK, et al. (2005). The AD8: a brief informant interview to detect dementia. Neurology, 65(4), 559-564. https://doi.org/10.1212/01.wnl.0000172958.95282.2a


