高齢ドライバーのペダル踏み間違いはなぜ起きる?事故データと家族でできる対策

ニュースで踏み間違いの事故を見るたびに、親の運転が頭をよぎる。そう感じる人は少なくありません。データを見ると、踏み間違いは75歳以上で目立ちます。一方で、起きやすい場面と、減らすための手段もわかってきました。
3行でわかる
- 2025年の死亡事故のうち、ブレーキとアクセルの踏み違いは、75歳以上の運転者で363件中31件、75歳未満で1,578件中15件でした(警察庁)。
- 日本の実験では、しばらく操作が途切れた後にペダルを選ぶ場面で、高齢の人の踏み間違いが増えました。間違いに気づいて踏み直すまでの時間も長くなっていました。
- 65歳以上への運転の練習や訓練で事故が減ったという研究のまとめがあり、技能の向上には実車での練習が効果的でした。安全装置つきの車に限るサポートカー限定免許という選択肢もあります。
01結論から言うと
踏み間違いは、注意がそれた後に足を動かす場面と、間違いに気づいて立て直す動きが、年齢とともに遅れやすいことで起きると考えられます。親の不注意を責めるより、起きやすい場面を知って一緒に備えるのが近道です。
ペダルの操作は、足元を見ずに行います。体が覚えた位置に頼って、ブレーキとアクセルを選んでいます。
操作が途切れた後は選び間違いが起きやすく、間違えた後に足を離して踏み直すまでにも時間がかかります。
ただし、高齢の運転者が事故全体で特に多いわけではありません。日本の2016〜2020年のデータでは、過失のある事故の率は、男性の18〜19歳が免許保有者10万人当たり年1,811件、75〜79歳が548件でした[5]。高齢期に目立つのは、踏み違いを含む「操作のミス」という種類の事故です。
02研究とデータでわかっていること
75歳以上の死亡事故では、踏み違いを含む「操作不適」が最も多い原因です。実験では、操作が長く途切れた後や、思わぬ加速が起きたときに、高齢の人ほど間違いや立て直しの遅れが見られました。
警察庁(2026年公表、2025年のデータ)[1]
75歳以上の死亡事故の原因で最も多いのは「操作不適」で、120件(33.1%)でした。75歳未満の約3.1倍の割合です。このうちブレーキとアクセルの踏み違いは31件でした。
対象: 日本の自動車運転者による死亡事故(75歳以上363件、75歳未満1,578件) / 限界: 件数の集計で、個人ごとの運転の上手さを示すものではありません。
Hasegawaら(2021)[3]
ペダルを選ぶ課題の前に、数字をタッチする別の作業を入れました。作業が約120秒と長いと、約30秒のときより踏み間違いが増えました。高齢の人では約3.8%と約0.5%、若い人では約1.0%と約0.4%で、増え方は高齢の人で大きくなっていました。
対象: 18〜32歳の40人と67〜81歳の40人(日本の研究機関の実験) / 限界: 実験装置での課題で、実際の車の運転ではありません。
Hasegawaら(2020)[4]
ブレーキを踏んだのに、まれに加速する設定で実験しました。赤信号を見てペダルを踏むまでの速さに年齢差はありませんでした。一方、加速に気づいて足を離すまでと、別のペダルを踏み直すまでの時間は、高齢の人のほうが長くなりました。
対象: 18〜32歳の40人と67〜81歳の40人(日本の研究機関の実験) / 限界: 画面を使った模擬の課題で、事故の起きやすさを直接測ったものではありません。
Ishiiら(2023)[6]
65歳以上の運転者への運転の練習を調べたランダム化比較試験をまとめました。2研究(960人、実車の運転レッスンと認知のトレーニング)の分析で、練習を受けた人は事故が減りました。10研究(575人)では運転の技能が上がり、技能の向上は実際の車での練習で確かめられ、教室での練習でははっきりしませんでした。
対象: 地域に住む65歳以上の運転者(事故を調べた2研究はオーストラリアと米国) / 限界: 事故の減少を調べた研究は2本と少なく、練習の種類もさまざまです。技能の向上には、少なくとも合計3時間・3回・3週間ほどの練習が必要な可能性があるとされています。
03まだわかっていないこと
実際の道路で、親のような一人ひとりの踏み間違いがどの場面でどれくらい起きているかは、まだよくわかっていません。安全装置の効果も、日本の高齢運転者で確かめた研究は限られています。
- 実験で見られた「途切れた後の踏み間違い」が、実際の駐車場や交差点でどの程度起きているか
- 踏み間違いのときに加速を抑える装置で、高齢運転者の事故がどれだけ減るか(日本の高齢者を対象にした査読論文は、今回の調査では見つかりませんでした)
04親と一緒にできること
起きやすい場面を親と共有する、実車の練習を一緒に調べる、車を替えるときに安全装置を話題にする。どれも親が自分で選ぶ形で進めます。
「ヒヤッとした場面」を責めずに聞く
踏み間違いは誰にでも起きうるものとして話します。「最近、駐車場でヒヤッとしたことあった?私もこの前あったんだ」と、自分の話から始めると答えやすくなります。
目安 帰省や電話のついでに・5分
止まった後の発進を意識してもらう
実験で踏み間違いが増えたのは、操作がしばらく途切れた後でした。駐車場で発進する前や、信号待ちの後に、足の位置をひと呼吸確かめる習慣を提案します。「お父さんの運転を疑っているわけじゃなくて、私も最近やっているんだ」
目安 次に一緒に乗るとき
実車で練習できる場を一緒に調べる
研究では、運転の技能を上げるには、教室より実際の車での練習に効果がありました。自動車教習所などの高齢者向けの講習や、70歳以上が更新時に受ける高齢者講習(実車指導60分)も練習の機会です[2]。「腕試しのつもりで、一度プロに見てもらうのはどう?」
目安 更新の前後に・数時間
車を替えるときは安全装置を話題にする
衝突被害軽減ブレーキや、ペダル踏み間違い時加速抑制装置がついた車に限るサポートカー限定免許(2022年導入)もあります[2]。「次の車は、踏み間違えたときにブレーキを助けてくれる機能があるものも見てみない?」
目安 買い替えを考えたとき
運転に不安があるときは、警察の安全運転相談(#8080)で相談できます[2]。踏み間違いと一緒に物忘れが気になる場合は、物忘れと認知症のはじまりの違いも参考に、かかりつけ医かお住まいの地域の地域包括支援センターに相談してください。免許の返納を考える段階なら、免許返納の切り出し方の記事も役立ちます。
05よくある質問
踏み間違いは高齢者だけに起きるの?
いいえ。2025年の死亡事故では、75歳未満の運転者でもブレーキとアクセルの踏み違いが15件ありました(警察庁)。ただ、死亡事故に占める割合は、75歳以上で約8.5%、75歳未満で約1.0%と差があります(警察庁の件数から当メディアで計算)。
親が一度踏み間違えたら、認知症を疑うべき?
踏み間違い1回だけで認知症かどうかは判断できません。注意がそれた後などには、若い人でも起きます。物忘れなど、ほかの変化も気になる場合は、かかりつけ医かお住まいの地域の地域包括支援センターに相談してください。
踏み間違いを防ぐ装置がついた車なら安心?
衝突被害軽減ブレーキや、踏み間違い時に加速を抑える装置は、事故を防ぐための支えになります。こうした装置がついた車に限って運転を続けるサポートカー限定免許もあります(2022年導入、警察庁)。ただし、装置ですべての事故を防げるわけではなく、日本の高齢運転者での効果を確かめた研究はまだ限られています。
出典
- 警察庁交通局 (2026). 令和7年における交通事故の発生状況について. https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/jiko/R07bunseki.pdf
- 警察庁. 高齢運転者対策の概要. https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/pdf/r08_koureiuntengaiyou.pdf
- Hasegawa, K., Kimura, M., & Takeda, Y. (2021). Pedal Misapplication: Interruption Effects and Age-Related Differences. Human Factors, 63(8), 1342-1351. https://doi.org/10.1177/0018720820936122
- Hasegawa, K., Kimura, M., & Takeda, Y. (2020). Age-related differences in correction behavior for unintended acceleration. PLoS One, 15(7), e0236053. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0236053
- Ichikawa, M., Inada, H., & Nakahara, S. (2024). Revisiting Older Drivers' Risks of At-fault Motor Vehicle Collisions in Japan. Journal of Epidemiology, 34(6), 295-300. https://doi.org/10.2188/jea.JE20230217
- Ishii, H., Okubo, Y., Doi, T., et al. (2023). Effect of driving training on car crashes and driving skills in older people: A systematic review and meta-analysis. Geriatrics & Gerontology International, 23(11), 771-778. https://doi.org/10.1111/ggi.14702


