車をやめた親の外出が減った。運転しない暮らしの移動手段と、外出が減ると起きること

親が車をやめてから、なんとなく家にいる時間が増えた。そう感じたら、減ったのは「用事の外出」より「楽しみの外出」かもしれません。日本の調査では、運転をやめても通院や買い物は続く一方、趣味や人の家を訪ねる外出が大きく減っていました。車の代わりに出かけられる手段を、親と一緒に作っておくことが大切です。
3行でわかる
- 2025年に自分から免許を返した人のうち、75歳以上は26万915人で、全体の6割でした(警察庁)。
- 運転をやめた75〜80歳は、通院や買い物は続けていても、趣味や人の家への外出が少ない傾向でした(北海道千歳市の調査)。
- 運転しなくても電車・バス・タクシー・自転車をよく使う人は、人とのつながりが弱まった状態との関連が見られませんでした。
01結論から言うと
車をやめた後に減りやすいのは、趣味や友人に会いに行く「楽しみの外出」です。送迎だけに頼らず、親が自分で使える移動手段をいくつか用意しておくことが外出を保つ鍵になります。
運転をやめても、病院や買い物には何とか行けます。家族に乗せてもらったり、バスやタクシーを使ったりできるからです。
一方で「行かなくても困らない外出」は、手間がかかると後回しになります。趣味の集まり、友人の家、外食などです。こうした外出は、人とのつながりそのものです。
返納を話し合う段階の話し方は、親に免許返納をどう切り出すかの記事にまとめています。この記事では、返納した「後」の暮らしに絞ります。
02研究とデータでわかっていること
運転をやめた人は、楽しみの外出が少なくなる傾向があります。移動の困りごとは孤独感やうつ症状とも関連していました。車以外の手段をよく使う人では、悪い関連が見られませんでした。
北海道千歳市の調査で、運転をやめた人が出かけていた割合(男性/女性)を、運転を続けている人と比べると次のとおりです[1]。
- 日用品の買い物: やめた人 86%/95%、続けている人 97%/98%
- 病院に行く: やめた人 92%/93%、続けている人 93%/91%
- 人の家を訪ねる: やめた人 51%/66%、続けている人 82%/88%
- 趣味で出かける: やめた人 40%/54%、続けている人 75%/71%
買い物と通院はほぼ変わらないのに、人に会う外出と趣味の外出は大きく下がっています。2025年に自主返納した人は全体で43万5,067人、そのうち75歳以上が60.0%でした[5]。多くの家庭が、この「返納後の暮らし」に向き合っています。
Sasakiら(2026)[1]
運転をやめた人は、乗せてもらう・歩く・電車やバス・タクシーを組み合わせて出かけていました。買い物で電車・バスを使う人は男性53%、女性50%でした。男性は女性に比べ、人に乗せてもらうことが少ない傾向でした。
対象: 北海道千歳市の75〜80歳1,435人(運転を続ける916人、やめた238人、もともと運転しない281人)、2023年 / 限界: 1回の調査のため、運転をやめたことが外出を減らしたのか、体調の変化で両方が起きたのかは区別できません。
Fukueiら(2024)[2]
運転をやめていても、電車・バス・タクシー・自転車のどれかを週に数回以上使う人は、運転を続ける人と比べて「社会的フレイル(人とのつながりや外出が弱まった状態)」との関連が見られませんでした。どれもあまり使わない人では、オッズ比(起こりやすさの比)が2.14でした。
対象: 日本の60歳以上977人(平均65.3歳)、2022年のインターネット調査 / 限界: 1回の調査で因果関係はわかりません。ネットを使える比較的若い人が中心です。
Choi・Marti(2025)[3]
移動手段の問題で家族や友人に会いに行けない、楽しみに出かけられないという人は、孤独感が強く、うつ・不安の症状とも関連していました。その関連の約4割は、孤独感を通じたものと推定されました。
対象: 米国の65歳以上7,547人(2023年の全国調査)。移動の問題があると答えたのは4.4% / 限界: 米国のデータで、1時点の分析です。
Bennettら(2026)[4]
運転をやめる人向けの3時間の講座を受けた後、参加者は運転をやめる悲しさや実際の心配が軽くなったと書いていました。6週間後には、新しい移動の方法を試し始める人が多く見られました。
対象: オーストラリアの25人 / 限界: 人数が少なく、講座を受けなかった人との比較がありません。
03まだわかっていないこと
移動手段を支えると、親の元気が保てるかを確かめた日本の試験は、まだ見つかりませんでした。多くは1回の調査で、原因と結果の向きは言い切れません。
- 移動手段を増やす支援で、外出や健康が実際に保てるか(試験で確かめた研究は見つかりませんでした)
- 体調が落ちたから運転をやめたのか、運転をやめたから外出が減ったのか(1回の調査では区別できません)[1][2]
- 電車やバスが少ない地域で、何が代わりになるか
- 家族の送迎と、親が自分で出かける手段のどちらがよいか(比べた研究は見つかりませんでした)
04親と一緒にできること
まず親の「行きたい場所」を聞き、そこへの行き方を一緒に試します。送迎は頼みやすくしつつ、親が自分で使える手段も残しておくのが基本です。
車をやめた気持ちと、行けなくなった場所を聞く
運転をやめるのは、楽しみや自由を手放すことでもあります。「車をやめて、行きにくくなった所ってある?」と聞き、趣味の集まりや友人の家など、用事以外の場所も書き出します。
目安 電話や帰省のときに10分
行きたい場所まで、一度一緒に行ってみる
バスの乗り場や時刻、タクシーの呼び方を一緒に確かめます。「次に帰ったとき、一緒にバスで○○まで行ってみない?私も道を知っておきたいから」と、自分も知りたいという形で誘います。
目安 次の帰省で半日
送迎を頼みやすくする(特に父親)
千歳市の調査では、男性は乗せてもらうことが少ない傾向でした[1]。「出かけたい日を先に教えてくれたら、こっちも予定を組みやすいんだ」と伝え、頼むことへの遠慮を減らします。
目安 月の初めに予定を聞く
地域の移動や集まりの情報を一緒に集める
近くの集いの場や、移動の手助けの情報は、お住まいの地域の地域包括支援センターで相談できます。外出が減って足腰や物忘れが気になるときは、かかりつけ医に相談できます。転びにくい体づくりは親の転倒を防ぐ記事も参考にしてください。
目安 返納後3か月以内に一度
05よくある質問
免許を返納した親が家にこもりがち。どうすればいい?
まず「行けなくなった場所」を親に聞いてみましょう。日本の75〜80歳の調査では、運転をやめた人は通院や買い物は続けていても、趣味や人の家への外出が少ない傾向でした。行きたい場所までの行き方を一緒に調べ、一度一緒に行ってみるのが第一歩です。
運転をやめた高齢者は、何で出かけていることが多い?
北海道千歳市の75〜80歳の調査では、家族などに乗せてもらう、歩く、電車・バス、タクシー、自転車を組み合わせていました。たとえば買い物で電車・バスを使う人は、運転をやめた人の約半数でした。
送り迎えは毎回、家族がしたほうがいい?
送り迎えと、親が自分で使える手段を比べた研究は見つかりませんでした。日本の60歳以上の調査では、運転していなくても電車・バス・タクシー・自転車を週に数回以上使う人は、人とのつながりの弱まりと関連が見られませんでした。送迎だけに頼らず、親が自分で出かけられる手段も一緒に用意しておくと安心です。
出典
- Sasaki T, Ichikawa M, Yamada K, Tomari Y, Kobayashi D. (2026). Sex Differences in Instrumental Activities of Daily Living and Transportation Modes by Driving Status Among Older Adults. Occupational Therapy International, e6621910. https://doi.org/10.1155/oti/6621910
- Fukuei T, Akaida S, Taniguchi Y, et al. (2024). Associations between Driving Status, Frequency of Transport use after Driving Cessation, and Social Frailty among Middle-Aged and Older Adults. Annals of Geriatric Medicine and Research, 28(4), 437-444. https://doi.org/10.4235/agmr.24.0071
- Choi NG, Marti CN. (2025). Transportation barriers, loneliness, and depressive/anxiety symptoms in older adults. Innovation in Aging, 9(12), igaf127. https://doi.org/10.1093/geroni/igaf127
- Bennett JM, Booth CL, Modesto O, Weir B, McGuckian TB. (2026). Thriving without driving: Exploring the impact of a driving retirement intervention on older adults through a dual process model of coping with bereavement. The Gerontologist, 66(9), gnag166. https://doi.org/10.1093/geront/gnag166
- 警察庁. 運転免許統計(令和7年版)「申請による運転免許の取消件数の年別推移」. https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/r07main.pdf


