親がひとり暮らし。孤立や孤独は健康にどれくらい影響する?

親がひとり暮らしになると、「このままで体は大丈夫?」と心配になりますよね。研究からわかるのは、ひとり暮らしそのものより、人とのつながりが少ない「孤立」のほうが健康との関連が強いということです。ひとりで暮らしていても、話す相手や出かける先がある親は少なくありません。
3行でわかる
- 65歳以上のひとり暮らしは増えていて、2020年には女性の22.1%、男性の15.0%でした(内閣府)。
- 研究のまとめでは、孤立は死亡リスクの約1.35倍、ひとり暮らしは約1.21倍と関連していました。
- 東京の研究では、ひとり暮らしが必ずしも健康のリスクではなく、人づきあいの少なさのほうが影響が大きい可能性が示されました。
01結論から言うと
孤立や孤独は、よく知られた死亡の危険因子に匹敵するほど健康と関連すると報告されています。ただし影響が大きいのは「人とのつながりが少ないこと」で、ひとり暮らしだけで心配しすぎる必要はありません。
言葉を2つ分けておきます。「孤立」は、人と会う・話す・集まりに出るといった、つながりの量が少ない状態です。「孤独」は、本人が寂しいと感じる気持ちです。
ひとり暮らしの親でも、近所の人や友人とよく話していれば孤立ではありません。反対に、家族と同居していても孤立していることがあります。
02研究とデータでわかっていること
世界の研究のまとめで、孤立・孤独・ひとり暮らしはどれも死亡リスクの高さと関連していました。関連がいちばん強かったのは孤立で、日本の研究でも同じ傾向でした。
Nakouら(2025)[4]
86本の研究をまとめると、孤立は死亡リスクの1.35倍、ひとり暮らしは1.21倍、孤独は1.14倍と関連していました(ハザード比)。
対象: 主に65歳以上を対象にした、長期間追いかけた研究 / 限界: 研究ごとの結果のばらつきが大きく、欧米の研究が中心です。
Holt-Lunstadら(2010)[3]
148本の研究をまとめると、人とのつながりが強い人は、生き続けている確率のオッズ比が1.50でした。一方、「ひとり暮らしかどうか」だけで比べた研究では1.19で、はっきりした差とはいえませんでした。
対象: 30万8,849人(年齢や国はさまざま) / 限界: 観察研究のため、つながりの少なさが原因とまでは言えません。
Sakuraiら(2019)[5]
ひとり暮らしで人づきあいも少ない人は、その後の追跡でうつ症状の強まりや握力の低下などが多く見られました。家族と同居していても人づきあいが少ない人は、閉じこもりや日常生活の動作の衰えが多く見られました。
対象: 東京都板橋区の高齢者400人 / 限界: 1つの地域の比較的少ない人数の研究です。
Lunarら(2025)[6]
「ひとり暮らし」「友人と会うのが月1回未満」「趣味やスポーツなどの活動が週1回未満」のうち2つ以上に当てはまる人を孤立とすると、約9年の追跡で、生存期間が平均69.5日短いという関連がありました。
対象: 日本の自立して暮らす65歳以上、約2万人 / 限界: 観察研究で、すべての違いを調整しきれているとは限りません。
内閣府の2024年の調査では、困ったときに頼れる人が「いない」人は、孤独感が「しばしばある・常にある」割合が21.5%で、「いる」人の2.9%を大きく上回りました(16歳以上の全世代)[2]。
03まだわかっていないこと
孤立が健康を悪くするのか、体調が悪いから孤立するのかは、まだ切り分けきれていません。つながりを増やす取り組みで寿命が延びるかも確かめられていません。
- 孤立が原因なのか、体調の悪さが孤立と健康の両方を招いているのか(観察研究が中心です)[3][4]
- つながりを増やす支援で、病気や死亡が実際に減るか
- 日本やアジアでの結果(まとめに含まれる研究は欧米が中心です)[4]
04親と一緒にできること
ひとり暮らしかどうかより、親が週に何回人と話し、どこに出かけているかを知ることから始めます。今あるつながりを守り、困ったときの頼り先を一緒に確かめておきましょう。
「最近、誰と話した?」を気軽に聞く
寂しいかどうかを問いただすより、ふだんの話として聞きます。「最近、誰かとお茶したりした?」と聞けば、つながりの様子が自然にわかります。
目安 電話のたびに1つ
今あるつながりを応援する
友人、近所の人、趣味の集まりは、親が自分で作ったつながりです。「〇〇さんとの集まり、まだ続いてるの?いいね」と、続けることを応援します。友人と月1回、活動に週1回が、日本の研究で使われた目安です[6]。
目安 帰省のときに話題にする
困ったときの頼り先を一緒に確かめる
「急に具合が悪くなったら、近くで最初に頼めるのは誰?」と聞き、名前と連絡先を一緒にメモしておきます。近くに頼れる人がいなければ、お住まいの地域の地域包括支援センターに相談できます。
目安 次の帰省で15分
05よくある質問
ひとり暮らしの親は、早く亡くなりやすいの?
65歳以上を中心にした86本の研究のまとめでは、ひとり暮らしは死亡リスクの約1.21倍と関連していました。ただし、人とのつながりが少ない「孤立」の約1.35倍より小さく、東京の研究では、ひとり暮らしが必ずしも健康のリスクではなく、人づきあいの少なさのほうが影響が大きい可能性が示されました。暮らし方より、つながりの量を見ることが大切です。
親は「寂しくない」と言うけれど、本当?
内閣府の2024年の調査では、孤独感が「しばしばある・常にある」人は70代で2.5%、80歳以上で2.8%と、若い世代より少ない結果でした。ただ孤独感は本人の感じ方で、人づきあいの量とは別です。寂しさを問いただすより、最近誰と話したかを気軽に聞くほうが様子がわかります。
心配なら同居したほうがいい?
同居すれば安心とは言い切れません。東京の研究では、家族と同居していても人づきあいが少ない人に、閉じこもりや日常生活の動作の衰えが多く見られました。どこに住むかは親の気持ちを聞いて一緒に決め、まずは親の周りのつながりを保つことを考えましょう。
出典
- 内閣府. 令和8年版高齢社会白書(全体版)第1章第1節3「家族と世帯」図1-1-9. https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2026/html/zenbun/s1_1_3.html
- 内閣府孤独・孤立対策推進室. 孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和6年)調査結果のポイント(2025年4月公表). https://www.cao.go.jp/kodoku_koritsu/torikumi/zenkokuchousa/r6/pdf/tyosakekka_point.pdf
- Holt-Lunstad J, Smith TB, Layton JB. (2010). Social relationships and mortality risk: a meta-analytic review. PLoS Medicine, 7(7), e1000316. https://doi.org/10.1371/journal.pmed.1000316
- Nakou A, Dragioti E, Bastas NS, et al. (2025). Loneliness, social isolation, and living alone: a comprehensive systematic review, meta-analysis, and meta-regression of mortality risks in older adults. Aging Clinical and Experimental Research, 37(1), 29. https://doi.org/10.1007/s40520-024-02925-1
- Sakurai R, Kawai H, Suzuki H, et al. (2019). Poor Social Network, Not Living Alone, Is Associated With Incidence of Adverse Health Outcomes in Older Adults. Journal of the American Medical Directors Association, 20(11), 1438-1443. https://doi.org/10.1016/j.jamda.2019.02.021
- Lunar FR, Kondo N, Honda Y, et al. (2025). Sociodemographic heterogeneity in the association between social isolation and all-cause mortality among Japanese older adults: JAGES longitudinal panel study. The Lancet Regional Health - Western Pacific, 63, 101691. https://doi.org/10.1016/j.lanwpc.2025.101691


