ひとり暮らしの親が家で倒れていたら。孤立死のデータと、早く気づくための見守りの工夫

「もし家でひとり倒れていたら、誰が気づくんだろう」。離れて暮らす親を思うと、ふとよぎる不安です。データを見ると、ひとり暮らしで亡くなった高齢者の約6割は3日以内に見つかっていました。早く気づけるかどうかを分けるのは、毎日のゆるいつながりと、いざというときの段取りです。
3行でわかる
- 2024年に自宅で亡くなったひとり暮らしの65歳以上は58,044人(警察が取り扱った数)。うち約6割は3日以内に見つかっていました。
- 8日以上たって見つかった人は65歳以上で約27%。内閣府は「8日以上」を、生前に孤立していたと強く推測できる目安にしています。
- 英国の90歳以上の研究では、ひとりで転んで起き上がれなくなることは珍しくなく、緊急通報の道具があってもほとんど使われていませんでした。
01結論から言うと
ひとり暮らしの親に万一のことがあっても、多くは数日以内に誰かが気づいています。気づくまでを短くする鍵は、毎日の小さな連絡と「連絡が取れないとき誰が見に行くか」を先に決めておくことです。
ひとり暮らしの親が家で亡くなるのは、特別なことではありません。高齢になれば、誰にでも起こりうる最期のかたちの1つです。
ただ、見つかるまでに時間がかかると、本人も家族もつらい思いをします。内閣府の作業部会は、亡くなってから長く見つからない状態を「孤立死」と呼んで実態を調べ始めました[2]。
データからわかるのは、日ごろ誰かとつながっている人ほど早く見つかりやすいということです。親の暮らしを見張るのではなく、ゆるくつながる工夫が大事になります。
02研究とデータでわかっていること
自宅で亡くなったひとり暮らしの65歳以上のうち、約6割は3日以内に、約27%は8日以上たってから見つかりました。東京の研究では、男性のほうが見つかるまでに時間がかかっていました。
警察庁は2024年の1年分のデータを初めてまとめました。警察が取り扱った死体20万4,184体のうち、自宅で亡くなったひとり暮らしの人は76,020人。そのうち65歳以上が58,044人で、76.4%を占めました[1]。亡くなってから見つかるまでの日数は、65歳以上で次のとおりです。
| 見つかるまで | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 0〜1日 | 22,734人 | 39.2% |
| 2〜3日 | 11,986人 | 20.7% |
| 4〜7日 | 7,694人 | 13.3% |
| 8日以上 | 15,630人 | 26.9% |
割合は警察庁の人数をもとに当メディアで計算しました(日本・2024年・65歳以上)[1]。内閣府の作業部会は、8日以上たって見つかった場合を「少なくとも7日間、連絡が取れないことを気にかける人との接触がなかった」と推測できる目安としています。全年齢では21,856人でした[2]。
Ninomiyaら(2026)[3]
東京23区で自宅で亡くなったひとり暮らしの人は、2016年から2023年で計46,313人。見つかるまでの日数の中央値(真ん中の値)は男性5日、女性3日でした。3日以内に見つかった割合は、男性40.7%、女性57.1%です。男性の6割、女性の7割は、亡くなる前に医療を受けていました。
対象: 東京都監察医務院の記録(東京23区、全年齢。男性の年齢の中央値70歳、女性80歳) / 限界: 東京23区だけの記録で、地方の状況とは違う可能性があります。
この研究では、夏と冬に亡くなる人が増えていました。夏は熱中症が、事故による死因の中で最も多く、溺れた378件のうち368件は入浴中でした[3]。季節の変わり目に連絡を少し増やすのは、理にかなった工夫です(親のエアコンと熱中症、冬のお風呂の事故も参考に)。
Fleming・Brayne(2008)[4]
1年間に転んだ90歳以上の人のうち、80%は少なくとも1回、自分で起き上がれませんでした。30%は床に1時間以上いました。長く床にいたことは、重いけがや入院、その後の施設への転居と強く関連していました。
対象: 英国ケンブリッジを中心とする90歳以上の110人(自宅・施設を含む) / 限界: 人数が少なく、日本の住まいにそのまま当てはまるかはわかりません。
この研究で注目したいのは、緊急通報の道具の使われ方です。ひとりで転んで起き上がれなかった場面の99%で、本人は何らかの通報の道具を持っていました。それでも80%の場面では使われず、床に1時間以上いた場面では97%で使われていませんでした[4]。本人や介護者の声からは、「自分には必要ない」という受け止め方、自立していたい気持ち、操作のしにくさなどが理由に挙がっています。道具を用意するだけでは足りず、親が使う気になれる形にすることが大切です。
03まだわかっていないこと
見守りの工夫で、見つかるまでの日数がどれだけ縮むかを確かめた研究は、今回の調査では見つかりませんでした。誰が、どうやって見つけたのかも、全国のデータには含まれていません。
- 毎日の連絡や地域の見守りで、見つかるまでの日数が縮むか(比べた研究は見つかりませんでした)
- 家族・近所・医療や介護の関係者のうち、誰が見つけることが多いか(警察庁のデータに項目がありません)[1]
- かかりつけ医が死亡診断書を書き、警察を通らなかった人は数に入っていません。逆に、事件性のある死も一部含まれます[2]
- 8日以上という目安は、孤立していたかどうかの推測です。日数がたっていても孤立していなかった人もいます[2]
04親と一緒にできること
見張るのではなく、親が負担に感じない「毎日の合図」と「連絡が取れないときの段取り」を一緒に決めます。親が自分で助けを呼べる形も、親の意見を聞きながら整えます。
毎日の「ゆるい合図」を一緒に決める
電話でなくても、短いメッセージやスタンプ1つで十分です。「毎朝なにか一言送ってくれたら、私が安心できるんだけど、どうかな」と、子どもの安心のためとして頼むと受け入れられやすくなります。合図の方法とだいたいの時間は、親に選んでもらいます。
目安 次の電話で5分。続けるのは1日1回
「連絡が取れないとき」の順番を決めておく
返事がない日に、誰が様子を見に行くかを決めます。近くの親戚、親しい近所の人、合鍵を預ける先などです。「もし電話に出ない日があったら、誰に見に行ってもらうのがいい?」と、親に選んでもらう形で聞きます。
目安 帰省のときに15分。連絡先は紙にも書いて親と子で1枚ずつ
転んだときに助けを呼べる形を話し合う
英国の研究では、通報の道具があってもほとんど使われていませんでした。家の中でも携帯電話を身につけておくなど、親がふだんの暮らしで続けられる方法を一緒に選びます。「家の中でも、電話をポケットに入れておいてくれると助かるな」と伝えます。床からの起き上がり方は、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談できます。
目安 会話の中で1回。習慣になるまで時々思い出してもらう
夏と冬は、連絡を少しだけ増やす
東京の研究では、夏と冬に亡くなる人が増えていました。暑い日や寒い日は「今日は暑いね、エアコンついてる?」と、天気の話をきっかけに声をかけます。
目安 猛暑日や冷え込む日に1回
地域の見守りの取り組みを聞いてみる
お住まいの地域の地域包括支援センターでは、高齢者の暮らしの相談ができます。その地域にどんな見守りの取り組みがあるかを、子どもからも問い合わせられます。決める前に、親の気持ちを必ず聞きます。
目安 電話1本、10分ほど
ひとり暮らしの親の健康とつながりについては孤立や孤独は健康にどれくらい影響する?、連絡の頻度の目安は電話や帰省の頻度はどのくらいがいい?で詳しく書いています。
05よくある質問
ひとり暮らしの高齢者が家で亡くなった場合、どのくらいで見つかる?
警察庁の2024年のデータでは、自宅で亡くなったひとり暮らしの65歳以上のうち、約6割が3日以内に見つかっていました。8日以上たってから見つかった人は約27%でした(割合は当メディアで計算)。
孤立死とは、何日たってから見つかった場合のこと?
決まった日数の定義はありません。内閣府の作業部会は、亡くなってから8日以上たって見つかった場合を、生前に孤立していたと強く推測できる「目安」としています。2024年は全年齢で21,856人でした。
毎日電話するのは親にとって負担では?
負担に感じる親もいます。電話でなく短いメッセージにする、方法と時間を親に選んでもらうなど、親が続けやすい形にするのが大切です。子どもの安心のためにお願いする形で伝えると、受け入れられやすくなります。
緊急通報の道具を用意すれば安心?
用意するだけでは足りないかもしれません。英国の90歳以上の研究では、ひとりで転んで起き上がれなかった場面の80%で、持っていた通報の道具が使われていませんでした。親が使う気になれる形かどうかを、一緒に話し合うことが大切です。
出典
- 警察庁刑事局捜査第一課. 警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者(令和6年). 2025年4月. https://www.npa.go.jp/publications/statistics/shitai/hitorigurashi/R6nennreikaisoubetu.pdf
- 内閣府 孤独・孤立対策推進室.「孤独死・孤立死」の実態把握に関するワーキンググループ. 孤立死者数の推計方法等について(取りまとめのポイント). 2025年4月. https://www.cao.go.jp/kodoku_koritsu/torikumi/wg/pdf/houkokusyo_gaiyou.pdf
- Ninomiya H, Ae R, Suzuki H. (2026). Descriptive Epidemiology of solitary death (kodokushi) in Tokyo's 23 wards, Japan, 2016-2023. Journal of Epidemiology. https://doi.org/10.2188/jea.JE20260157
- Fleming J, Brayne C. (2008). Inability to get up after falling, subsequent time on floor, and summoning help: prospective cohort study in people over 90. BMJ, 337, a2227. https://doi.org/10.1136/bmj.a2227


